ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られるジャーナリストでメディア・アクティビストの津田大介氏。今回は、都合が悪い情報収集を避けようとしたフェイスブックについて。
* * *
ネットの政治広告の透明性を高める──これはデジタル広告を扱うIT企業が直面する喫緊の課題だ。特にデジタル広告市場を寡占するグーグルとフェイスブックにとっては、企業としての先行きを左右しかねない大問題でもある。
発端は2016年の米大統領選挙期間中、フェイスブックやグーグル、ツイッターに、ロシアが関与したとされる「不正な広告」が掲載されたことだ。その内容は人種や移民問題に関するもので、世論の対立をあおり、社会の分断を狙ったものだった。これは後に、ロシアによる選挙干渉、いわゆるロシアゲートの一部として報道され、議会でも取り上げられた。
ネット上の政治広告が選挙干渉に利用された背景には、それがはらむ不透明性がある。米国ではテレビやラジオの政治広告には規制がかけられ、情報開示が義務づけられているが、ネットの政治広告は対象に含まれていない。
さらに、デジタル広告ならではの点として、蓄積したユーザーの情報を利用し、性別や居住地、人種などの特性で提示対象を絞り込めるターゲティング広告がある。対立をあおるために利用されたが、広告の対象外の人にはその存在すら把握できない。詰まるところ、誰がどのような対象に、どのような内容を、どれくらいの規模で広告したのかがまったくわからないのだ。
こうした不透明な状況を改善すべく、米議会ではネット広告規制法案が提出され、グーグルやフェイスブックは逆風にさらされることになった。
議会をなだめ、規制を回避すべく、各社とも自主的な対策を進めていった。
具体的には「悪意ある広告」を検出するための審査人員増員、政治広告であることの明示、広告主の表示、広告主の身分証明の厳格化、不正な広告主の排除、透明性のリポートや統計の公表、データベースの公開といった取り組みを行っているという。