室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。自らの子育てを綴ったエッセー「息子ってヤツは」(毎日新聞出版)が発売中</p>

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室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。自らの子育てを綴ったエッセー「息子ってヤツは」(毎日新聞出版)が発売中
(c)小田原ドラゴン
(c)小田原ドラゴン

 作家の室井佑月氏は、北方領土問題で振り回される安倍首相の交渉姿勢に疑問を抱く。

【安倍首相は内弁慶?イラストはこちら】 

*  *  *

 11月14日、シンガポールで行われた日露首脳会談は、歯舞群島・色丹島の引き渡しを明記した日ソ共同宣言を基礎に、平和条約交渉を加速させることで合意した。

 会談後、安倍首相は、

「戦後70年以上残されてきた課題を次の世代に先送りすることなく、私とプーチン大統領の手で必ずや終止符を打つ」

 とドヤ顔で語った。

 テレビはそこばっか使って、くり返し流してやんの。

 まるで、安倍首相の手柄によって、北方領土問題が解決したようである。

 でも、結局会談の中身といえば、「平和条約交渉を加速させる」「年明けにロシアで会談」ってだけ。

 つーかさ、4島ではなく、2島返還だったら、もっと前から出来たんではないの。

 ……と思っていたら、翌日の15日、プーチン大統領が会見で、

「引き渡し後に2島がどちらの主権になるかは、今後の交渉対象だ」

 と発言した。

 北方領土の総面積のわずか7%である歯舞・色丹でさえ、すんなり返還とはいかないみたいだ。

 ニュースによると、プーチン大統領は北方領土を引き渡した場合、米軍基地を置かないことを、アメリカのトランプ大統領との間で公式な文書で交わしてこいっていったとか。

 それいっちゃう? みんな知ってるけど気を使って口にしないのに、みたいな話を。

 さすが世界ドSランキング上位者。この国のいじめっ子、安倍首相がいじめられっ子になっちゃった。

 さあ、どうする安倍首相。返還交渉をしているのはこの国の領土なのに、米国にお伺いを立てなくてはいけない不思議。

 気楽に手柄を立てようとしたが、やっぱまずそのこと(日米地位協定など)から手をつけなくてはいけないややこしい話になってきたんではないかい?

 いいや、安倍首相のことだから、これまた世界ドSランキング上位者、トランプさんによる可愛がりを喜んで受けてくるわな。

 トランプさんの承諾を得るため、またまたこの国の富を献上すっか?

 武器をばんばん買う? 自動車の関税交渉で妥協する?

 テレビで流さなきゃいけないのはそこだ。あたしが知りたいのはそこ。この国の財産は、我々のものである。安倍首相、個人のものじゃない。交渉でなにを引き換えに差し出すの?

 武器だってリボ払いで買ってるんだからね。今後のあたしたちの生活がかかってるんだよ。

「外交の安倍」とかいってる人は、もう気付いて。

 9月の東方経済フォーラムの席上でプーチン大統領が、「前提条件なしに年内に平和条約を結ぼう」と安倍首相にいったとき、「いやいや、北方領土の返還なしには……」と、なぜいわなかった。笑いながら、いって欲しかった。「ウラジーミル、そうは問屋がおろしません」って。

 安倍首相って典型的な内弁慶じゃん。

※週刊朝日 2018年12月7日号

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室井佑月

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室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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