
「人とちゃんと向き合うことを知っている」。現在日本テレビ系で放送中のドラマ「獣になれない私たち」の演出を担当する水田伸生さんは、田中圭さんについてそう語った。芝居にも表れる、ナチュラルな彼自身の魅力とは? 誌面(週刊朝日11月2日号)には載せきれなかったインタビューを完全収録。
【田中圭・写真特集】けもなれとは違う? スーツ&萌え袖セーター姿のギャップにきゅん!
* * *
ドラマ「獣になれない私たち」に田中圭くんをキャスティングするきっかけになったのは、倉持裕さんが書いた「鎌塚氏、すくい上げる」(2012年)という舞台でした。彼のコメディをこなす能力に強く惹かれたんです。
昨年12月、脚本家の野木亜紀子さんと、松本京子プロデューサーとキャスティングの打ち合わせをしたんですが、物語の構想はその段階で決まっていたので、人間のコミカルな部分というか、おかしみが出るといいなという観点で、圭くんがいいなと思ったんです。
その期待に、彼はしっかりと応えてくれた。いえ、想像を超えてくれました。
たとえば第1話で、恋人役の新垣結衣さんと、田中美佐子さん演じる母親と、3人でレストランで食事をするシーン。シリアスな会話の直後、恋人と「仲良くなれそう」と言う母親に、パンを齧ったまま「ほんと?」と返すあの間は、明らかにコメディの間です。
彼はとってもクレバーなので、大工が設計図を見ただけで立体の建築物が目に浮かぶように、シナリオを読んだ段階で仕上がりが見えるのでしょう。どれだけ深刻なシーンでも、こうすればくすっと笑えるということが一読でわかる、すぐれた俳優だと思います。
このドラマがクランク・インした日、圭くんはまだ「サメと泳ぐ」という舞台に立っていて、昼の公演を終えての夜の撮影でした。それがこのレストランでのシーンです。台本10ページ以上にわたる長丁場なので、セリフがちゃんと入ってるかなと少し不安だったんですけど、まったく問題なかった。新垣さんとも田中さんとも初共演なのに、最初から、ちゃんと恋人同士、母と息子というリアリティがあった。