前もって記しておくが、私は護憲論者ではない。憲法と自衛隊との関係は、誰でもわかる大矛盾ありだ。

 憲法9条2項では、日本は戦力を持たず、交戦権を持たない、と明記している。だが、自衛隊は世界第8位の軍事力があり、もちろん戦力も有している。もっとも、こんな大矛盾があるとは歴代の自民党の首相は皆わかっていたはずだが、池田勇人以後、誰一人として憲法を改正しようとしなかった。

 竹下登氏が首相になったとき、私は直接問うた。日本には、自衛隊という組織があるが、これは戦えない軍隊である。戦えない軍隊でよいのか、と。竹下首相は、戦えないから日本は平和なのだ、戦えれば、軍隊というのは戦ってしまうのだ、と答えた。竹下以後の各首相もこれと同じ捉え方をしていたはずである。

 だが、安倍首相は憲法改正をしたいと表明した。自民党議員たちは当然同意しているはずだ。とすれば、それぞれの選挙区で、なぜ改正をすべきなのか、改憲でこの国と国民の生活がどう良くなるのかを説くべきである。ところが、ほとんどの自民党議員たちが説得するどころか、憲法から逃げている。これでは国民が改憲に賛成するわけがなく、憲法から逃げることは、安倍首相を裏切ることではないのか。

週刊朝日  2018年11月2日号

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