大相撲の第54代横綱・輪島で、14回の優勝を果たした輪島大士(本名・輪島博)さんが死去した。70歳だった。日本大学相撲部で学生横綱として活躍。1970年初場所でデビューすると、わずか1年で新入幕を果たす。72年には大関に昇進、翌73年に横綱へと上り詰めて角界のスター街道を歩み、北の湖とともに「輪湖時代」として人気を二分した。
【輪島さんが患った咽頭がんを含む頭頸部がんの種類を図版で解説】
輪島氏は、2013年12月に咽頭(いんとう)がんの手術を受け、発声が困難な状況だった。咽頭がんは喉の周辺に発生するがんで、頭頸部がんの1つだ。進行した頭頸部がんは5年以内に7割以上が死に至る。治療薬の進歩が乏しかったが、2017年3月、免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」が承認され、治療効果をあげている。この「オプジーボ」は、今年のノーベル医学生理学賞を受賞した京都大学の本庶佑特別教授らの研究が開発につながったことで話題となった。ここでは、咽頭がんを含む頭頸部がんの最新治療を紹介する。
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頭頸部がんは、口の中に発生する口腔がん、舌がん、鼻周辺に発生する鼻腔・副鼻腔がん、喉の周辺に発生する上咽頭がん、中咽頭がん、下咽頭がん、喉頭がんに分けられる。年間患者数は約4万7千人(厚生労働省患者調査・2014年)といわれ、過去30年で患者数は約3倍に増加している。
主な原因は飲酒と喫煙。最近では子宮頸がんの原因でもあるヒトパピローマウイルスの感染による中咽頭がんの発生が増加している。
初期の症状は声のかすれや飲食時の口や喉の違和感などありふれた症状だ。
国立がん研究センター東病院頭頸部内科長の田原信医師はこう話す。
「胃がん、大腸がんのような定期検診もなく、初期症状に気づいても放置している患者さんが少なくありません。結果として初診時には半数以上の患者さんが日常生活に支障をきたす進行がんで見つかるのが実情です」
早期では治癒を目指して手術か放射線治療が選択されるが、手術後にしゃべる、食べるという日常生活に不可欠な機能を喪失することもあるほか、患部が顔面付近であるため容貌が著しく変化することもある。