だから、それを抑えるのが政府の役割、つまり、防衛大臣の役割であり、総理大臣の役割だというのである。冷戦中は、米国はソ連と対立し、西側の極東部分、つまり日本を防衛する責任を有していた。だが、冷戦が終わって、米国は、日本に安全保障での責任強化を強く求めた。それが現在の安保条約の、日本が外国から攻撃されたとき米国は日本を守るが、米国が攻撃されても日本は何もしない、という片務条約ではなく、日本も米国を守るという双務条約にせよ、ということであった。それで、安倍内閣は2015年に集団的自衛権の行使容認に踏み切ったわけだ。安倍首相は、16年の秋、私に「集団的自衛権の行使容認を決めるまで、米国はヤイノヤイノと責め続けた。だが、集団的自衛権の行使容認を決めたら、米国は何も言わなくなった。満足している。だから、憲法改正の必要はなくなったのだ」と語った。だが、トランプ大統領になって、日本に超高価な武器を買え、と求め、防衛費の大幅な増額を要求している。これは実は陸自や海自にとっては望ましいことなのである。陸自や海自を強化できるからだ。だが、歯止めなき軍事力強化は、憲法で平和国家であると謳っている日本にとっては、大問題である。それを防衛大臣や総理大臣は抑えることができるのか。トランプ大統領とどういう交渉ができるのか。
※週刊朝日 2018年10月5日号