ほかの動物と共生できるおっとりとした性格や、温泉で見せるほっこりな表情から究極の癒やし系として日本中で愛されているカピバラ。そんな彼らの野生の姿を、動物写真家の岩合光昭さんが届けてくれました。
* * *
ブラジルのパンタナール大湿原。昼下がり、突然、鳥たちが張り裂けんばかりにけたたましい声を上げた。ジャガーだ。森に緊張感が走る。その時「ピッー」とホイッスルを鳴らしたような鳴き声が響くと共に、目にも留まらぬ速さでカピバラが鉄砲玉のように川へ飛びこんだ。
ここではカピバラもジャガーの食事メニュー、常に用心し警戒しながら暮らしている。だがそのおかげで鍛えられた体は、癒やし系と称されるおっとりとした雰囲気を保ちながらも、時に驚くほどの瞬発力を発揮し、美しい輝きを放つ。そんな野生のカピバラも、愛してもらえたらうれしい。
※週刊朝日 2018年9月21日号