交通が発達すると、地方の活力は大都市に奪われてしまう(ストロー現象)。だが九州の場合は、九州新幹線の始発点と終着点である福岡や鹿児島だけでなく、通過点の本も衰えを知らない。

 これについて、九州経済研究所の福留一郎・経済調査部長は「通過点の熊本には危機感があった。なんとかしないといけない、と打って出たのが『くまモン』でしょう。知名度が上がり、当初想定していたよりも、通過点としてのマイナスは少なかったと見ています」と話す。

 三科さんもまた、「ストロー現象に見舞われず、通過県まで栄えるのは、これまで常識的に言われたことを覆し、おもしろい」とうなり、「九州の各都市が『このままではいけない』という問題意識や連携意識を持っているからではないか」と評する。

 前出の福留さんは、九州内での往来が功を奏したのではないかという見方を示す。「ほかの新幹線と違い、九州新幹線は唯一、東京とつながっていない。そのハンディキャップがあったけど、福岡から鹿児島まで、4時間かかっていたのが1時間半に。九州内の往来が活発になりました」と解説する。鹿児島市からすれば、福岡市に人口が流出する恐れもあったが、「観光客やビジネス利用客の流入が大きく、恩恵が大きかった。JR鹿児島中央駅の周辺は再開発が進み、自然もある中で、都市化も進んでいる」(福留さん)。

 野村総研は九州の各都市がドイツの成長都市と共通の要素が多いと評価するが、福留さんは「ドイツの例から考えられることは、産学官連携が各都市で現実的にうまく機能していることではないか。機能させる環境や人材、教育がそろい、街やビジネスの活力を生んでいると考える。九州各都市もドイツの各都市に追いつくことが課題ではないか」。また、九州大学芸術工学研究院(都市論)の藤原惠洋教授は「せっかくの周縁なのに、どの都市もミニ東京を目指していないか」と危惧する。「米や麦、焼酎、明太子、水、温泉など、旧来ローカリティーが持っていた豊潤な資源を消費するだけでなく、各都市の創造性を示すため、総力戦で上手にマネジメントし、成長していくべきでしょう」(藤原教授)

 さて、九州の都市ばかりが頑張っているわけではあるまい。総合ランキング、ポテンシャルランキングともに、「おっ」と目をひいた都市をピックアップしてみた。

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