ジャーナリストの田原総一朗氏は、メディアの「朝日新聞批判」の訳を説く。
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「月刊Hanada」や「月刊WiLL」などの雑誌が毎月のように朝日新聞攻撃の大特集を展開している。もちろん言論、表現は自由だから、朝日新聞批判を行うのは何の問題もない。だが、毎月のように朝日新聞批判を、まるで目玉企画としているのは尋常ではない。それほど新しい展開はないにもかかわらずだ。つまり、朝日新聞批判を目玉とすると雑誌が売れるということなのだろう。
両誌が朝日新聞批判を大きく報じ始めたのは、森友・加計疑惑などが生じて、安倍内閣の支持率が落ち始めたころからである。
そもそも朝日新聞や毎日新聞、東京新聞などは、安倍首相が「戦後レジームからの脱却」を唱え東京裁判批判を展開したころから批判的だった。安倍首相が「ナショナリスト」で、いわば「歴史修正主義」ではないか、ととらえたからだ。
2013年12月に安倍首相が靖国神社に参拝すると、中国・韓国だけでなく米国も「失望した」と強く批判した。何人もの首相が靖国参拝をしたが、米国が批判をあらわにしたのはこのときが初めてである。米国も、安倍首相が「歴史修正主義」ではないか、と疑ったのだ。
安倍首相はその後、靖国参拝はしなくなったが、特定秘密保護法や集団的自衛権の行使容認など、それ以前の歴代首相がタブーとして避けてきた法案を次々に成立させて、野党はもちろん、朝日新聞、毎日新聞、東京新聞などは強く批判し続けた。いわば反安倍首相的な姿勢をはっきり示すようになった。
「Hanada」や「WiLL」、さらに「正論」や「Voice」などに書いている学者や評論家の多くは、このころから安倍首相の政策を支持し、東京裁判批判や靖国参拝も全面的に肯定していたが、朝日新聞批判は今ほどには打ち出さなかった。
繰り返しになるが、両誌が朝日新聞批判を大きく報じ始めたのは、森友・加計疑惑などで、安倍首相の支持率が落ち始めてからだ。安倍内閣に非常に強い危機感を持ち、何としても守らなければならないという、言ってみれば使命感のようなものを抱いたのではないか。