

漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏が、市原隼人主演ドラマ「明日の君がもっと好き」(テレビ朝日系 土曜23:05~)をウォッチした。
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「ブラジルのリオで蝶が羽ばたきをすると、それが東京に伝わり嵐を起こすというカオス理論がある」。と、いわゆる「バタフライエフェクト」的なセリフが出て来る本作。確かに青い蝶がたびたび現れる。羽ばたく。風が吹く。社長秘書・茜(伊藤歩)のスカートがめくれる。それ「バタフライエフェクト」じゃなくて、ラッキースケベでは?
とにかくこのドラマ、登場人物もストーリーもただごとじゃない。茜の妹・梓(志田未来)は姉の恋人を奪い結婚。茜のスカートがめくれるのをいつも目撃する植木職人・亮(市原隼人)。彼と兄妹のように育った香(森川葵)は自らのセクシャリティーに悩み、一人称「僕」。冷え切った結婚生活に悩む梓と出会い、キスを交わす。それを知った梓の夫・智弘(渡辺大)は妻を問いただしながら、カーセックスで燃え上がる(竹林じゃないよ)。
もう設定盛り込みすぎで、見てるこっちが胸やけするのもおかまいなし。なんせ脚本・井沢満なのだ。以前の作品「同窓会」(93年、日テレ系)はフタを開ければ、テーマは「同性愛」。TOKIOの山口達也が売り専ボーイになったり、毛ジラミに感染した斉藤由貴が股間を掻いたりと、今思えばよく放送できたよね!という問題作。ツッコミ待ちでネタをぶっこむ近頃のドラマとはケタ違い、あくまでもガチなとんでもっぷりにしびれる。
今回、特にやばいのは茜の会社の後輩・城崎(白洲迅)だ。今は亡き母親に虐待されたトラウマから、熟女を誘惑してはののしる。「女もババァになると深層外旋六筋(しんそうがいせんろっきん)が劣化して、ケツが垂れるんだよ。顔はエステで金かけて頑張っても、ケツが干し柿じゃさ!」。干し柿も衝撃的だが、生まれて初めて聞いた深層外旋六筋! こんな専門的かつゲスい言葉責めをした直後に、ポエムを語りだす城崎。
「ママ、僕はロンドンの濃い霧の中にあなたを見失い、あなたを追いかけながら永遠に追いつけないメリーゴーラウンドに乗っている」
お前、いつロンドンにいたんだよと、すっかり視聴者の脳内も五里霧中。そして茜と亮が夜更けの街を歩けば、この世のものとは思えない巨大な満月。井沢脚本が羽ばたくと、スカートがめくれ、ポエムを口ばしり、月が巨大化する。バタフライよりも恐ろしいのだ、「井沢満エフェクト」。
※週刊朝日 2018年2月23日号