それにしても、有線奨励賞を受賞した「十年経てば」の歌詞は、セクハラを一気にふきとばす破壊力だった。テレビで流れた以上、問題だと記しておきたい。娘に語りかける父の歌で、10年経てば君も誰かに恋をして「母ゆずり白いその肌をどんな男が抱くだろう」「女にただ生まれたこと恨みながら彼を求め」る辛い恋かもしれないが幸せを願ってるよ、でも今はまだ父の隣にいてね、というもの。作詞はヒットメーカーの及川眠子で、スコットランド民謡を津軽三味線に乗せ、34歳の新人木島ユタカが、美しくなめらかな声で歌う。歌詞を聴かなければ、なかなか名曲、だけれども!
小学生の娘の未来を性的に妄想する父の思いが公共メディアでフツーに流れる現実は何を意味しているのかと、考えさせられる。自分の娘を「小さい女」という目線でしか見られない父親が少数ではないということ? 子育ては妻まかせのくせに「娘さんをください」と言われる日にどんな顔をするかを妄想する父が多数ということ?
娘を“嫁に出す”父親(時に兄)の気持ちを一方的に歌い上げる伝統がこの国にはあるが「十年経てば」は、やってはいけない一線を越えている。女の子というだけで一方的に性的に妄想される気味悪い行為を率先してやる父親など、どれだけ女の子にとって脅威だろう。妄想は取り締まれないが、その妄想、せめて引っ込めておくたしなみもてよ。キモイよ。
ちなみに、この歌詞に、梅沢先生は反応なし。梅沢エロの基準が分かりません。
※週刊朝日 2017年12月22日号