安室奈美恵(画像提供:avex)
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安室奈美恵ヒストリー(週刊朝日 2017年10月6日号より)

 歌手の安室奈美恵(40)の電撃引退発表は、NHKの報道番組でも取り上げられるほどのインパクトを与えた。沖縄から上京した小柄な彼女は、アイドルからアーティストへと変貌し、逆境にも耐え、ぶれることなく歌一本で勝負してきた。40歳の彼女が結論として出した去り際の美学に迫る。

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 安室奈美恵は誕生日である9月20日、公式サイトで1年後の引退を発表。NHKが速報し、民放各局も追随する事態となった。NHK広報は、

「編集判断についてはお答えしていません」

 としたが、速報の事実が安室奈美恵の存在の大きさを物語っている。

 安室奈美恵とはどんな存在だったのか。アイドル評論家でコラムニストの中森明夫氏はこう言う。

「一言でいえば、『ワンアンドオンリー』な存在だった、と言えるのではないでしょうか。彼女のような活躍を見せた歌手は他に類を見ない」

 沖縄出身の安室は1992年にダンスグループ「SUPER MONKEY’S(スーパーモンキーズ)」の一員としてメジャーデビューし、その後ソロになって大ブレーク。「小室サウンド」と呼ばれた小室哲哉プロデュースの音楽のブームにも乗り、ミリオンヒットシングルは5作品を数える。中森氏はデビューしてまだ数年の安室と仕事で一緒になったことがある。

「彼女が16か17歳ごろに雑誌の撮影でお会いしました。東京タワーの下での撮影でした。ちっちゃいなあというのが第一印象で、とにかく明るくて気さく。若さもあったのでしょうが、疲れた様子を一切見せない子でした」

 沖縄から上京した小柄な少女が輝きを放つ。安室の鮮烈なデビューは往年のアイドルと共通点があると中森氏は語る。

「『アイドルは南からやってくる』というのが私の持論で、71年にデビューした沖縄出身の南沙織さんから今の日本のアイドルカルチャーが生まれました。その後、キャンディーズやピンク・レディーの解散、山口百恵さんの引退があって、アイドルブームが陰りそうになる時期がありましたが、そこに突然、福岡出身の松田聖子さんが現れた。そしておニャン子クラブブームを経て、またパッとしない時期が続くんですが、そんなときに安室さんが南からやってきたんです」

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