13年には東京五輪(20年)の開催が決まった。海外の投資家の目が首都圏の不動産に向かった。価格がニューヨークやロンドン、香港などと比べて割安だったこともあり、投機マネーが東京に集まった。「アベノミクス」による日本銀行の異例の金融緩和策で、国内の余った資金も不動産市場に流れ込んだ。上場不動産投資信託(Jリート)などの金融商品も人気となった。

 外国人観光客の増加で、ホテルは全国的に建設ラッシュとなった。住宅ローンの金利も低くなり、30~40年の長期計画で、マンションや住宅を買う人もいた。

 節税目的でタワーマンションを買う人も目立った。以前はマンション1棟の全体の価値を評価し、階数に関係なく床面積に応じて税額を算定する方法だった。このやり方だと、値段の高い上層階は、実際の価格より低めの評価になる。そのため、上層階の部屋を買って相続させる方が、現金を相続させるより税負担が軽くなっていた。

 こういった要素がマンションなどの価格を一気に押し上げ、バブルの様相を呈していった。

 いま東京都心部の地価は過去最高水準になっている。相続税などの計算基準となる路線価(1月1日時点、都道府県庁がある都市)でみると、最高額は東京・銀座の文具店「鳩居堂」前の1平方メートルあたり4032万円。前年より26%も上昇し、バブル後の1992年に記録したピーク(3650万円)を上回った。

 しかし、バブルはいつか崩壊する。実はマンションの値段はすでにピークを超えたとみられている。

 不動産経済研究所が発表している「マンション市場動向」の首都圏の数字を見てみよう。

 首都圏の16年の分譲価格は5490万円で、5年前に比べ1千万円ほど高いが、15年より28万円下落している。

 グラフの推移を見ると、右肩上がりの傾向が続きそうにも思えるが、前出の榊さんは、

「いまはちょっとした広さの部屋でも、サラリーマンの手が届かない価格になってしまった。実需を超えて値上がりした分は長続きせず、いつかは反動が来る。すでにバブルが崩壊する予兆が見えている。今後5年ぐらいで、いまより2割ほど値段が下がる物件が出てきても不思議ではない」

 と言い切る。

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