映画「カーズ3」を見ると、人生の後半って、もしかしたら負けを認めることを学んでいくのかなと。人に対してだけじゃなく、年にも体力にも、自分にも。負けた自分を認めて、そこからどう踏み出すのか?

 負けを認めたときに周りになにを言ってあげられるのか?

 これが50代になってくると、より負けも認めやすいと思うんだけど、やっぱり40代ってまだまだ気持ちが若かったりするので、それをしにくいんですよね。

 20代前半のときに、車の免許を取ろうとして教習所に通い、ヘロヘロになってる僕に、20歳以上年上の先輩作家が言った。「おさむ、将来、絶対に仕事なんて減るから。仕事が減ったら時間ができる。だからな、今は免許とか無理に取らずに、そのときのために、取っておけよ。俺なんかさ、この年になって、大型二輪の免許とか取りに行ってさ。楽しいぞ~」と教えてくれた先輩。残念ながら50代のときに亡くなってしまったのだが、あのときに、負けることを認めて、ギラギラしていた僕にあのアドバイスをくれたあの作家さんは、まさに「カーズ3」のマックィーン。今になってその格好良さが染みる。

週刊朝日  2017年8月4日号