
ついに登場したニューヨーク『ボトム・ライン』最終日
New York Bottom Line 1975:Last Show (So What)
マイルスがニューヨークのヴィレッジにあった『ボトム・ライン』に出演したのは、1974年11月8日・9日、75年6月10~12日の計5夜(ただし確認されている限り)。これまで74年は11月8日が『コンプリート・ライヴ・アット・ボトム・ライン1974』(So What)、75年は6月10日が『ファースト・ナイト・アット・ボトム・ライン1975』(同)、11日が『ニューヨーク・ボトム・ライン1975』(Jazz Masters)として発売され、最終日12日がこの『ラスト・ショー』となる。ただしコンプリートというわけではなく、このときマイルスは3日間、毎晩8時30分と11時の2回ずつ、つまりは計6ステージ消化したが、『ラスト・ショー』に収録されているのはわずか5曲、しかもどの演奏がどちらのセットなのか明確でなく、やや宙ぶらりんの状態。まずは「出すこと」を優先させたのだろう。またこの音源もソー・ホワットとメガ・ディスクの時差バッティングとなったが、同一ソースゆえどちらでも可。とはいえ、ここでは曲目のクレジットが正しい前者を掲載しておきたい。
コマ切れながらもいちおうは50分近いアガパン山脈って、意味、わかりますか?などと質疑応答している余裕などなく、いきなり《アンタイトルド・ラテン》のトランペット・ソロからスタート。ちなみにこの曲、オリジナルのスタジオ・ヴァージョンは『アンノウン・セッションズVol.1』に計5テイク入っている。それなりの曲だが、それなりの曲でしかないという中途半端なラテン加減が魅力といえば魅力。次にくる《エムトゥーメ》が圧倒的。録音の性格上、音域が狭く、バランスがど真ん中に集中しているためにせせこましいが、だからこその凝縮感と熱波的灼熱感はかなりの快感。このCDのハイライトは、その《エムトゥーメ》から一方的にメドレーで《アンタイトルド・チューン》にもっていく瞬間に漂うマイルスな哀愁。つづく《ジンバブエ》の不協和音から《ターンアラウンドフレーズ》に爆発的に突入していくあたりのアレンジと間合いもすばらしい。
最後に、同時期のツアー・スケジュールと音盤化を整理しておこう。『ポールズ・モール』(4/28-5/3)からは2日、『ジャスト・ジャズ』(5/12-17)からは12日、『ボトム・ライン』(6/10-12)からはいちおう全日、つづくエイヴリー・フィッシャー・ホール(7/1)もと、ほぼ支障なく網羅的にCD化されている。いよいよ残すは引退直前の最後のライヴにあたる9月5日、セントラル・パークの野外ステージのみ。レパートリーも内容も既発ライヴ盤と大同小異だろうが、ここまできたのだ、余力で発掘してもらいたい。
【収録曲一覧】
1 Untitled Latin (incomplete)
2 Mtume
3 Untitled Tune
4 Zimbabwe
5 Turnaroundphrase (incomplete)
(1 cd)
Miles Davis (tp, org) Sam Morrison (ss, ts, fl) Pete Cosey (elg, per) Reggie Lucas (elg) Michael Henderson (elb) Al Foster (ds) Mtume (per)
1975/6/12 (NY)