
青木崇高さんは俳優としての立場で発言を求められると、戸惑うことが多いという。
「むず痒いというか、(胸を指して)この辺がシュワシュワするんです(苦笑)。よく、“特殊な仕事ですね”みたいに言われますけど、僕自身は、そんなに特殊だとも思ってなくて。たとえば、舞台の本番のために稽古を繰り返すことも、一つの労働の形という認識です。労働という意味では、バイトか芝居しかしたことがないので、他と比べようがない(笑)」
俳優とそれ以外という、仕事のカテゴリーに関してだけではない。映像と舞台、自分と他の俳優など、徹底して“比較”でものを語らない人である。俳優としてではなく、一人の人間としてどう生きていきたいかと訊くと、「たくさん“もの”を持ちたいという意識は、あまりないです」という答えが返ってきた。
「欲しいものがあるとしたら、経験値ですね。とにかく、いろんな経験を積みたい。満足かどうかを決めるのは、“もの”ではなくて、その人の心一つだと思うんです。今思えば、僕も20代で仕事がまったくないときに、バイトしたり映画を観たりする以外に、積極的に旅に出たことで自分の感情の動きに気づけた。経験って、一つでも多くの心の中の変化を感じることじゃないのかな。お陰で最近は、別に遠いところに行かなくても、近所を散歩しながら、日常のちょっとしたことにも感動できるようになりました(笑)」