

「40を超えたら女優は終わり」と、ハリウッドでは定説のようにささやかれてきた。だが、ジュリアン・ムーアは55歳。良き妻であり、母でもある彼女は毎回、優れた作品で、人間の奥深さを表現し続ける。主演映画「ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気」では、愛する人を守るため、社会を変えようと闘った、同性愛の女性という役に挑戦。作品の魅力と自身の人生について語った。
ムーア演じる主人公のローレルは、正義感の強い女性警察官。保守的な男性社会で生きてきた女性が、人生の最後にカミングアウトし、平等な権利を世に求めていく物語だ。実話から生まれた作品で、2008年には、「Freeheld」という題名の短編ドキュメンタリーでオスカーを受賞している。
「その短編ドキュメンタリーのDVDが脚本と一緒に送られてきて、その時に初めて見て、この話を知ったのよ。感動で涙が止まらなかったわ。この話を自分が知らなかったことに、あらためて驚いてしまった。ローレルは、真のヒーローよ。彼女を演じる機会を与えてもらえることに、私は心から感謝しました」
米国でも、同性カップルに対する偏見は根強い。だが、15年6月、米連邦最高裁判所は、同性婚を含むすべての米国人の結婚を憲法上の権利として保障するとの判断を示した。同性婚を合法と認めた画期的な判断には、この映画のモデルとなった実話が影響を与えたとされている。だからこそ、彼女はローレルをヒーローと呼ぶのだ。
「彼女は正義を信じる人。それで人生の最後を、闘いのために費やすことになった。完全に変わるためには、長い時間がかかる。でも、アメリカに住む私たちは、今、以前よりずっと進んだ時代に生きていると思う」
相手役のエレン・ペイジ(ステイシー役)は、自身もレズビアンであることを公にしている。今作ではプロデューサーも兼任した。
「エレンにとって、これは特別なプロジェクトだった。彼女は今作に8年か9年を費やしたはずよ。今作の前にも彼女の作品は見ていて、良い仕事をする女優だと思っていたけれど、いざ会ってみると、私たちは本当のコネクションを感じたの」