フォーリー絶好調のナカハタキヨシこの夜
Le Zenith 1986 (Sapodisk)
最近はクール・ジャズさんががんばり、量的に他のレーベルを大きく引き離していたが、このフランス、パリのル・ゼニットにおけるライヴは久々にサポディスクからの新作。ちなみにサポさんは同時に『オクトバー1987』も発売したが、今回はル・ゼニットでのライヴをご紹介したい。
クレジットでは1曲目が《スター・ピープル》となっているが、実際に聴いてみると1曲目は《パーフェクト・ウェイ》。単純なミスだろう。録音はオーディエンスと思われるが、タイトに引き締まった録音はプロの仕事とみる。何度も書くようで申し訳ないが、音質は良好だがサウンドのど真ん中にパワーが感じられないことが多いサウンドボード録音より、少々ノイジーながらもドッカンとサウンドが前方に迫り出してくるオーディエンス録音のほうはボクは好きですね。
ともあれオープニングの《パーフェクト・ウェイ》は曲にふさわしく軽く流され、2曲目のブルース《スター・ピープル》から「オレたち、本気だぜ」の野太いブラッド・スウェット&ティアーズが飛び散り、とくにフォーリーのイキかたがハンパでない(昨今は「ハンパない」というようです)。ところでヴィーナス・レコードよ、看板ピアニストのエディ・ヒギンズ亡きあと、『フォーリー・プレイズ・クラシック・ブルース』なんていう企画物、いかがでしょう(おいおい)。
そして強烈なファンク・ビートが売りの《リンクル》に突入、ここだけの話、ワタシ、この曲におけるスティーヴ・ソーントンをたいしたものだといつも思っているのです。微妙なカラミ具合が知性を感じさせ、邪魔せず、かといって押し黙るでもなく、じつに絶妙な佇まいが「パーカッション奏者かくあるべし」と思わせてくれるのです。
さらに《TUTU》のドンッ、ダンッから1958年キャノンボール・アダレイとの『サムシン・エルス』収録《枯葉》のイントロを思わせる厳かなイントロになだれ込み、マイルスのミュートが小さすぎて穿けないズボンのように下半身から上半身に向かってキチキチとせり上がってくる感じ、いつ聴いてもたまりません(ワタシってMなのでしょうか)。この曲でもフォーリーの短くも集中力の極致ともいうべきソロがたまらず、本日のフォーリー、絶好調のナカハタキヨシこの夜ではないか。さらにさらにつづく《スプラッチ》も鋭くキチキチ路線で、このCD,1枚とあってじつに聴きやすくお薦めではあります。
【収録曲一覧】
1 Perfect Way
2 Star People
3 Wrinkle
4 Tutu
5 Splatch
6 Portia
7 Burn
8 Portia
(1 cd)
Miles Davis (tp, key) Bob Berg (ss, ts) Garth Webber (elg) Robert Irving (synth) Adam Holzman (synth) Felton Crews (elb) Vincent Wilburn (ds) Steve Thornton (per)
1986/9/20 (France)