リヨン1986
リヨン1986

話題のボックス・セットとリヨンでのライヴ
Lyon 1986 (Cool Jazz)

 今年もいよいよ押し迫ってきました。超廉価マイルス・ボックスは入手されたでしょうか。あんなもんはいらん? そうでしょうそうでしょう。いくら安いからといって、あれほど不要な人には不要なボックスもないでしょう。しかし「安い」という表現は、ある特定の人にはあたらないかもしれません。というのもかなりの人が「ワイト島のライヴの完全版が入っているから」という理由で買ったように思われるからです。つまりその人は極論すればワイト島1枚のために2万円とか3万円を支払ったわけで、これではえらく高い買い物をしたことになります。あのですね、ワイト島はとっくに完全版がCD化されているし、『ミュンヘン・コンサート』というのですが、そちらのほうが圧倒的に安く、しかも音質もラウドでリアルな感じがするのです。ワイト島目当てでボックスを買おうかどうしようかと迷っている人は、しばし立ち止り、深呼吸をして、『ミュンヘン・コンサート』という2枚組廉価CDがあったことを思い出してください。『聴けV8』の372ページに載っています。

 さて今回は86年11月11日、フランスはリヨンにおけるライヴ2枚組であります。リヨンといえば「ハラホロヒレハレホッホー」のレオン・トーマス(ファラオ・サンダース『カーマ』に参加の異色ヴォーカル)を思い出さずにはいられないわけですが、そのようなことはまったくどうでもよく(だったら書くな)、本日もリヨンであれどこであれ《ワン・フォン・コール/ストリート・シーンズ》から飛び出すマイルスがかっこよく勇ましい。音質はオーディエンス録音なのでしょうが、えらくうまいバランスと音質でマイルス・バンドの全貌を捉え切り、相当数に達する86年物でもかなりの上位に置かれる秀作。なるほどカチッとした仕事ぶりで定評あるクール・ジャズらしい新作ではあります。

 メンバー的に押さえるべきところを押さえておけば、まずギターがガース・ウェバーというのがポイントが高い。結局マイルス・バンドでは地味ヘンドリックスな存在に終わったが、堅実な演奏はなかなかの貢献度。ベースはダリル・ジョーンズだが、ダリルとの相性も悪くない。まあマイルスとの相性と個人的才能に限界があったということだろう。
 次にレパートリー的には、うーむ、報告すべき点はなく、いつものレパートリーをいつものごとくこなしているといった感じ。しかしそれってじつはすごいことであり、その「すごいこと」を慢性化させるブートとはくれぐれも付き合い方をまちがわないようにと、今回は教訓編でもありました。

【収録曲一覧】
1 One Phone Call / Street Scenes-Speak
2 Star People
3 Perfect Way
4 Human Nature
5 Wrinkle
6 Tutu
7 Splatch
8 Time After Time
9 Full Nelson
10 Carnival Time
11 Tomaas
12 Burn
13 Maze
14 Portia
(2 cd)

Miles Davis (tp, key) Bob Berg (ss, ts) Garth Webber (elg) Robert Irving (synth) Adam Holzman (synth) Darryl Jones (elb) Vincent Wilburn (ds) Steve Thornton (per)

1986/11/11 (France)