■DVと騒がれ離婚

「妻が同窓会不倫に走ったので、詰問したら『DV!』と訴えられた」と苦渋の表情を浮かべるのは、松川さん(仮名・40歳)。

 松川さんはエスタブリッシュな学風の有名私立大卒。30代で通信機器の子会社社長に就任後、子会社を上場させた。国際線の客室乗務員と結婚し、都内でも有数の高級住宅地に一戸建てを購入。2人の子供にも恵まれ、順風満帆の人生を送っていた。ところが上の子供が有名小学校に入学した年の夏に、同窓会に出席をしてから妻の様子が変わった。「触らないで!」とセックスを拒否したり、深夜にコンビニに買い物に出かけるようになる。不信感が募り、探偵に調査をさせると、同窓会で再会した元カレとヨリを戻していたことがわかった。

「詰問しているうちに、妻の挑発に引っかかって、携帯を奪おうと腕を押さえたら、『DV!』と逆上して子供を連れて実家に帰ってしまった。すぐに妻が委任した弁護士から内容証明郵便が届きました。DVによる精神的慰謝料の請求と離婚届でした。夫婦の喧嘩とはいえ、上場企業の社長がDVというのが表沙汰になれば、会社や株主、社員に迷惑がかかる。辞任して、自らが上場させた会社を去ることにしました」

 松川さんは慰謝料と子供の養育費を払い、「負けるが勝ち」と起業して独身貴族を謳歌する道を選んだ。(作家・夏目かをる)

週刊朝日  2016年7月29日号より抜粋