東京への一極集中が止まらない日本。しかし、一般社団法人「東京23区研究所」所長の池田利道氏は、『東京どこに住む?』の著者・速水健朗氏との対談で、今「地方創生」で行われている議論は無謀だという。
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池田:東京は、地方の暮らしや古い東京のよいところを取り込む底力がある。温故知新的なムーブメントを起こし、受容する柔軟性があるんです。そういう懐の深さは、都心回帰の大きな原動力になっています。
速水:一極集中をなくそうと、「地方創生」が叫ばれていますね。都心に集まる人口を分散させる方向で政策は動いています。池田さんは、一極集中を食い止めるべきだと思いますか。
池田:食い止めようとしてできるものではありません。地方の人口が減り、高齢化が加速することは大きな問題です。とはいえ、だから地方に人口を戻すべし、というのは違います。
速水:では、何をするべきなのでしょうか。
池田:地域を活性化させ、新しい人の流れをつくることです。とかく「人口の流出を食い止めよう」となりがちですが、私は反対です。街の新陳代謝を阻害してしまうから。それぞれの地域には文化がちゃんと根付き、求心力がある。それをどうブランド化するかを考えることが、あるべき方策でしょう。一極集中の是正ありきで、「地方の施設が空いているから、年寄りを移住させよう」という議論は最低だと思いますね。
一極集中は経済の大きな流れのなかで必然的に起きている。都市は仕事や資産の集積という極を持ち、地方は地域文化という極を持つ。その二つの極の力学を慎重に見極める必要があるのに、強引に片方から何かを引き離す議論は無謀です。
速水:本当は地方で暮らしたい。でも、生きるために仕方なく東京に住むかのようなムードの論調があるじゃないですか。都市というとコンクリートジャングルの冷たいイメージで、暮らしは殺伐としていると。僕はそこに前々から違和感を抱き、異を唱えたかった。
例えば、通勤ラッシュや交通渋滞などを見ても、ひどかった時と比べてだいぶ改善した。電車の本数が増えたり、時差通勤が広がったり。随分と変わったのに、古い都市のイメージが残っている面もある。現代の都市は違うよ、と僕は言いたかったんです。