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 ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られるジャーナリストでメディア・アクティビストの津田大介氏は、ネットが普及してから、ジャーナリズムが経済的な危機に瀕しているとし、「寄付」に期待を寄せている。

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 EU離脱が決まった直後の6月29日、英国の高級紙・ガーディアンに掲載された一つの記事が話題を集めた。記事の見出しは「もしあなたがEU離脱に関するガーディアンの報道を評価するならば、我々に資金を提供してください」。直球勝負の“お願い”だ。

 記事を執筆した同紙のキャサリン・ヴァイナー編集長は、同紙が置かれている経営環境を「ほかのマスメディアと同様、信じられないほど困難な状況に置かれている」と表現。EU離脱問題に関する報道で抜群の存在感を示した同紙であっても、売り上げ減に悩まされていることが明らかになった。

 この20年、世界中の新聞社は常にネットの存在に悩まされてきた。ネットが普及した90年代後半から00年代中盤にかけて、新聞社はネットに無料で記事を公開していたが、その結果、売り上げは大きく下落。「ネットを使えば無料で多くの情報にアクセスできる。有料の新聞にお金を払う必要はない」と多くの消費者は考えた。

 対抗策として新聞社が打ち出した施策が「ペイウォール」だ。会員登録をしていないユーザーは記事の一部だけしか閲覧できなかったり、月のうち数本までは無料で全文読めるがそれを超えると一切見られなかったりする仕組みである。米国ではニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストなどが、日本では朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、日経新聞などが既に導入しているが、ガーディアンのウェブサイトはこうしたペイウォールを導入しておらず、すべての記事を無料で読める。報道している内容に高い公益性があると自負しているからこそ、ペイウォールの代わりに「寄付」をお願いしたのだろう。

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