ソフトバンクの孫正義氏と、後継候補とみられていたニケシュ・アローラ氏 (c)朝日新聞社
ソフトバンクの孫正義氏と、後継候補とみられていたニケシュ・アローラ氏 (c)朝日新聞社

 英国のEU離脱で、世界経済は大揺れだ。円高の加速など先行き不透明感が増し、日本企業も経営陣のかじ取りが問われる。そんななか、東京商工リサーチが2016年3月期の役員報酬額上位のランキングをまとめた。上位10人のうち6人が外国人役員。高額所得者も国際化が進む。

 ランキングは、16年3月期決算の2442社の有価証券報告書から作成している。報酬1億円以上の役員の公表を義務づける制度に基づき、211社の414人の氏名と金額が示された。前年より1人多く、人数は過去最高だった。

 昨年は上位10人中3人が外国人だったが、今年は倍増の6人。トップは、ソフトバンクグループ副社長を6月に退任した米グーグル出身のニケシュ・アローラ氏。報酬額は64億7800万円で、歴代最高となった。

 アローラ氏は、謎に包まれている。15年6月に副社長になったばかりで、海外事業の責任者として6月22日の株主総会でも再任される予定だった。しかし、総会前日になって、退任が突如発表された。

 孫正義社長は株主総会でアローラ氏の高額報酬について、こう説明している。

「高給を取りすぎとの声もあるが、グーグルにいればそれぐらいもらっていた」

 アローラ氏退任に関し、孫社長は「僕がもう少し社長を続けたくなった」「あと5年か10年は社長を続ける」などとも表明している。一方で、総会後になって、米証券取引委員会(SEC)が投資を巡る利益相反の疑いでアローラ氏の調査を始めた、と報じられた。

 孫社長の後継候補と目されただけに、アローラ氏の待遇は破格だった。同社の有価証券報告書によると、副社長就任前の15年3月期にも、「主要経営幹部への報酬」として約166億円が支払われた。契約金の位置づけとみられる。わずか2年間で200億円超を手にして退いたアローラ氏の動向は、今後も関心を集めそうだ。

 アローラ氏とともに今年注目を浴びた外国人役員は、三菱自動車への出資を決めた日産自動車のカルロス・ゴーン社長。今や高額報酬の象徴的存在で、ランキング4位の10億7100万円だった。2年連続で10億円を超えている。

 ゴーン社長は株主総会で「優秀な人材は常に引き抜きのターゲットになっており、競争力のある報酬が必要」と高額報酬への理解を求めた。

「日本的な感覚では、ぎょっとするけれど、世界の市場で結果を出しているから妥当では」(64歳男性)

「ソフトバンクの例を聞くと高いと思わなくなった。業績も伸びており、配当も良いので不満はない。会社を良くするには強いリーダーが必要」(53歳女性)

 日産は16年3月期の純利益が過去最高。増配もしているだけに、総会に出席した株主は好意的に受け止めていたようだ。

 外国人経営者の報酬が高いことについて、東京商工リサーチ情報部の坂田芳博氏はこう話す。

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