「リニアができてもそれで一段落ではなく…」(※イメージ)
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 新幹線を軸に戦後を振り返ると、時代をあらわす広告とともに、旅や観光の文化を振興してきたのが、JR東海だ。その初代社長・須田寛さん(84)に、今や数少ない成長産業の一つでもあるこの観光と鉄道との関わりを、そしてその将来を聞いた。

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 ほとんどの地域に関係あるのが観光なのです。企業活動の多くは大都市圏が中心ですが、観光需要を掘り起こせば、山の奥などでもホテルを建てるなりして観光業は営めますので。地方に満遍なく経済効果をもたらすのにいちばん良い産業とも言えるかもしれません。

 観光は、ものづくりと同等の経済活動で、文化事業でもあります。楽しくなければ人は訪れてくれないので遊びの要素も必要ですが、遊びはあくまでも一つの手段に過ぎないのです。

 このあたりの理解が進まねば、日本が世界で外客誘致数が27位に留まっていたように、いつまでも観光後進国のままでしょう。中国の人が約1億人以上外国を観光で訪問しているのに、そのうち約300万人しか日本には来ていなかったのですから。

 私が観光をやりだした1990年代に比べれば状況は好転してはいるのです。「観光立国」との言葉が使われ始め、国策として列挙されるようになったでしょう。小泉内閣の頃から国でも会議が重ねられ、環境整備が進んでいきました。

 小泉さんは当時、国際旅行収支が年間3兆5千億円もの赤字であると知り、驚いたそうです。日本は観光に良い国なのに、なぜか。もっと観光で経済を活性化させたらどうか。そう小泉さんが働きかけたことが、観光立国に取り組むきっかけになったと言われています。

 当時は日本人旅行者が海外に年に1600万人行っていたのに対し、日本を訪れる旅行者は500万人ほどでした。円高で、かつ自由に日本を旅行できるビザを取るのが厳しい状況もあった。そこが変わっていくのが大きなポイントでした。

 さきほど、観光による地域振興の話題に触れました。これは鉄道のこれからにも関係があることです。観光振興のための仕事で私は全国各地に出かけていますが、昨今では、過疎化で地方の在来線の役割が問われていると感じる機会が多いのです。

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