日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の3社が11月4日、ついに上場する。
なぜ今、上場なのか。
05年に郵政民営化関連法が成立し、07年には郵政3事業の郵便、郵便貯金、簡易保険が、それぞれ株式会社に移管された。『大予想 銀行再編 地銀とメガバンクの明日』(平凡社新書)の著者で、企業アドバイザーのフレイムワーク・マネジメントの津田倫男代表が言う。
「郵政民営化は小泉純一郎元首相の悲願で、上場は民営化の集大成。国が株を持ち続け、財政投融資の非効率や官僚OBの天下りを続けていては国営企業と変わりはない。政官財の癒着をなくすというのが当初の目的でした」
民主党政権に移り、ゆうちょ銀行とかんぽ生命の上場は一時凍結。天下りが再開するなど民営化の構想からは後退するが、再び自民党に政権が戻ると、日本郵政株を売却して、その売却益を東日本大震災の復興財源に充てるという大義名分をつくり、上場に急いだ。
「今回、株の売却収入を東北の復興財源に充てる計画があるので、失敗は許されません。2回目、3回目の売り出し時にも、個人投資家に買ってもらうためにも、1回目の売り出しで株を取得した個人投資家には配当金を与えるなど“おいしい思い”をしてもらう必要があります」(杉村氏)
過去の政府放出株の経緯を振り返ってみよう。
1987年に上場したNTTに始まり、JTをはさんでJR各社、NTTドコモと続く。
売り出し価格より“初値”が下回ったのはJTのみ。初値とは上場して最初につける株価のこと。バブル崩壊後、市場が低迷したときの上場となったが、10年以上かけて高値をつけた。
相場の格言に「政策に売りなし」という言葉があるように、政府放出株は景気に左右されにくく、株価も比較的安定していることから、投資家から根強い人気を得ている。
経済ジャーナリストの雨宮京子氏がNTT上場後の熱狂ぶりを振り返る。
「NTTは上場後2カ月あまりで、上場した後の初値のほぼ倍、318万円まで値上がりしました。そのころ、私は証券会社の営業を担当していて、それまで株をやったことがないおじさん、おばさんたちが初めて買ったNTT株でもうけて、株にどっぷり浸かったことを思い出しました」
ちょうど日本経済がバブル景気の入り口にさしかかったころ。NTT株は「情報通信産業は21世紀の主要産業になる」と期待され、上昇相場に乗った。