林:この本に田原さんが出てきたから、意外でした。
山下:僕が「ピアノを弾きながら死にたい」と吹聴しているのを聞いた田原さんが、「なら俺が殺してやろう」と早稲田のゲバ学生の中でピアノを弾くというテレビ企画ができたんです。田原さんのおかげでフィルムが残り、伝説が残り、大学の学園祭めぐりみたいなことができた。学園祭で聴いてくれたのは10人くらいでしたが、そういう学生たちとのつながりは強かったですね。
林:山下さんはいま、大学で学生さんに教えているんですよね。
山下:ええ、母校の国立音楽大学で。今日も午前中、教室でジャズを教えていました。まずは「真っ当な事」を教えているんですよ(笑)。
林:この間、「セッション」という大学でジャズを教える映画を見たら、こんなつらいことをしてるのかと思いましたけど。
山下:見ましたか。プロのジャズマンの間では、あれは全否定酷評です。
林:あんなサドな先生がいるはずないと?
山下:それもありますが、あんなことでジャズがわかるわけない。菊地成孔(なるよし)というジャズ界のカリスマがケチョンケチョンに言ったら、町山智浩という映画評論家とぶつかって、ブログが炎上しちゃったんです。
林:あら、そんなおもしろいことになってるとは知りませんでした。
※週刊朝日 2015年7月17日号より抜粋