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 緑内障は、房水という眼の中を循環する液体がうまく排出されず、眼圧が上昇して視神経が障害されることで起こる。なお、日本人に多いのは、眼圧が正常範囲(10~20mmHg)にありながら視神経が障害され、視野が欠ける症状が現れる正常眼圧緑内障だ。だが、眼圧をより下げれば、進行を緩やかにできる。眼圧下降治療を受ける場合の注意点について、四谷しらと眼科院長の白土城照(しらと・しろあき)医師に聞いた。

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 正常眼圧緑内障の治療は、薬物から始めますが、最初は無治療で様子を見るのが理想です。なぜかというと眼圧は血圧と同じように、測るタイミングによって上下するからです。たとえば患者さんが緊張していると眼圧は高くなります。朝晩など一日の間や季節によっても変化し、そのパターンは一人ひとり異なります。緑内障治療の目標は眼圧を下げること。つまり治療がうまくいっているかどうかを測る目安になるのは、眼圧だけ。ですからベースとなる眼圧を正確に把握することが何より大事なのです。

 緑内障は視野が欠けていき、最後は失明に至る病気として知られているので、すぐに薬が処方されないと患者さんは不安になるでしょう。でもいきなり薬を出さない眼科医には、このような考えがあることを理解してほしいと思います。

 緑内障治療に使われる薬は種類が豊富です。薬は眼圧を下げる効果が大きくて、全身への副作用がないものから選ぶのが原則なので、第一選択はプロスタグランジン製剤となる場合が多いでしょう。プロスタグランジン製剤以外の薬の眼圧下降作用はほぼ横並びなので、選び方は患者さんによって異なります。β遮断薬は心臓や呼吸器の持病がある人には使えません。アドレナリンα2受容体作動薬は血圧が下がる、眠気が出るなどの副作用が出る場合があります。ROCK阻害剤は眼が充血しますが、全身的な副作用は今のところ報告されていません。 

 薬物で十分に眼圧が下がらない場合、残る手段は手術です。しかし手術で欠損した視野が回復するわけではありません。手術の効果も薬物と同じく眼圧を下げるだけなのです。

 手術には眼圧が下がらない、眼圧が下がりすぎる、乱視になる、白内障が進みやすいなどのデメリットもあります。ですから「薬物で眼圧が十分に下がらない」という理由だけで、手術を選択するのは誤りです。年齢、緑内障の進行スピード、欠損している視野や障害されている視神経の場所などを考慮して、慎重に検討する必要があります。

週刊朝日 2015年7月10日号