――自分の体験を通して、加害者を減らしたいということですね。
僕が倫理の教科書を読んだときにきれいごとだと思ったように、僕の活動もきれいごとだと思うかもしれません。詐欺師だからまただますんだろうと言われたこともあります。過去に詐欺をした事実は変わらないし、そう思われてしまうのは仕方ありません。
ただ、罪を犯せば家族も失い、社会からの信用もどん底に落ちます。もちろんお金も残りません。前科持ちになると、職業や資格取得にも制限がつきます。事件が報じられれば、デジタル・タトゥー(拡散され削除できないネット情報)として名前も残る。被害者を傷つけるのはもちろん、自分自身の未来も失うんです。
僕は家族を幸せにするんだと自分を正当化していましたが、被害者の方にも家族があって、僕が奪ったお金はその方が何十年もかけて貯めたものです。お金をだまし取られたことで、「おじいちゃん、何やっているの」と家族関係が悪くなってしまったかもしれない。いったい自分は何をしていたんだろうとようやく気づきました。
(構成/編集部・福井しほ)
※AERAオンライン限定記事