――どう受け止めましたか。
両親や妻、子どもを失って、刑務所のなかで過去の自分と向き合い続ける時間はとてもつらいものでした。こんなにも悲しい気持ちはこれまでに経験したことがなかった。その悲しみと同じことを被害者にしてしまったのだと思うと、いっそう申し訳ない気持ちになりました。
――罪の重大さに気づいて、被害者の方に改めて謝罪しましたか。
弁護士を通じて和解したあと、「もう関わりたくない」と言われていました。なので、手紙などは送っていません。
結局、金だけでつながっていた
――今振り返って、特殊詐欺をしていたことをどう思っていますか。
特殊詐欺を一緒にやっていた仲間たちは、結局は金だけでつながっていた関係です。本当の仲間はほとんどいませんでした。
――2021年に刑期を満了してからは、どう過ごしていますか。
後輩の会社で働かせてもらった後、知人が経営する飲食店で修業し、自分の店を開業しました。ただ、いろいろなことが重なり、うつ病を発症したため、今はアルバイトで生活しています。
――こうして取材を受けたり、元受刑者としての経験を発信したりすることで変化はありましたか。
元受刑者からの悩みを受けることが増えました。みんな共通の悩みがあって、その一つに犯罪歴をオープンにするかどうかがあります。服役していたことがわかるとハブられたり、就職できなかったりもする。それぞれトラウマがあるんです。
でも、僕は隠すからダメなんだと思っています。更生して、一生懸命やりますという思いがあるなら、最初から正直に伝えたほうがいい。後から発覚したら、「なんであのとき言わなかったんだ」となってしまう。
――過去に犯罪歴のある人がメディアに出て、活躍する姿を見たくないという人もいます。
そういう声があることは理解しています。でも、僕は犯罪を撲滅したいんです。単に「犯罪はよくない」と言われても、実際に犯罪に手を出す人にその声は届かない。
SNSで闇バイトが身近になったけど、手を出す人のほとんどは重大さをわかっていないんじゃないでしょうか。実際、僕も特殊詐欺犯が捕まったというニュースを見ても、「俺らには関係ない」「気をつければいい」と思っていました。「捕まったら懲役」と言われても、正直ピンとこない。失うものの大きさが想像できないんです。だから、手を出すとこんなことになると伝えることで、誰かに踏みとどまってもらいたい。