
Art Blakey
アート・ブレイキー名義のアルバムをB級と言うこと自体に無理がある、というご意見は良くわかる。しかしさまざまな名盤紹介本でも、このアルバムが顔を見せることはめったに無い。そうとうのブレイキー・マニアでも知らない人は多いのである。その証拠と言ってはなんだけど、ブラインド(ジャケットを見せないで)でこのアルバムをかけると、メンバー全員当てられる人はほとんどいない。
分かる気もする。特徴的なドラミングでブレイキーは当てられても、ブレイキーというとジャズ・メッセンジャーズのイメージが強烈で、そこから逆算するから迷うのだ。つまりどの時代のメッセンジャーズか推測しようにも、そもそもワンホーンなのだから困ってしまう。
モーガン、ショーター、コンビにしろ、フレディ・ハバードの時代にしろ、華やかな2管、3管アンサンブルがブレイキー印なのだから、いい演奏と分かっても、さてサックスは誰なんだろうと首をかしげる仕儀となる。答えはソニー・スティット。言われてみればなるほどなのだけれど、組み合わせ自体がピンとこないのだろう。
そしてピアノがマッコイ・タイナーとくれば、これはかなり不思議な顔合わせ。しかしいいのである。理屈抜きにノリがいい。何気ないハードバップながら、マッコイが意外な好演を見せている。スティットのアルバムとしてもかなり上位にランクされそうな演奏だ。おそらく全員の調子が良かっただろう。しかし、スティット・マニアがこのアルバムに注目している様子も無く、つまり真空地帯なのである。加えてコルトレーン色の強いインパルスというレーベル・イメージともそぐわない、ほのぼの陽性ハードバップというのも、このアルバムの盲点化に力を貸しているような気がしなくも無い。
取り立てて大名盤だとか問題作という気は毛頭無いが、オーソドックスなジャズ好きマニアに薦めればみな相好を崩すところをみると、やはりジャズ喫茶ならではの隠れB級名盤なだのだろう。店でこのアルバムをかけながら原稿を書いている最中、お客様から「知らなかったけれど、いい演奏、これからディスク・ユニオンに探しに行く」と言われました。まさにジャズ喫茶冥利に尽きます。
※リンクのCDは、JAZZ MESSENGERS!!!!! (1961年)との2-on-1CDです。
【収録曲一覧】
1. Caf' 5:33 2. Just Knock On My Door 6:56
3. Summertime 4:38
4. Blues Back 5:20
5. Sunday 7:20
6. The Song Is You 5:07
A JAZZ MESSAGE
ART BLAKEY drums
SONNY STITT alto & tenor sax
McCOY TYNER piano
ART DAVIS bass
Produced by BOB THIELE
Originally released as Impulse A(S) 45 (1964)