幻のマイルス・インタヴュー・レコード
The Miles Davis Interview 4 Aug, 1969 (CBS/Sony)
マイルスの新音源が途絶えたときは、マイルスと共演歴のある関連ミュージシャンの新音源を紹介し、最近ではアナログ・レコードのマニアックな情報もお伝えしている当コーナーですが、そうしてヴァラエティをもたせたほうがどうも好評なようでして、今後しばらくは拡大路線を推し進めたいと思います。
今回ご紹介するのは、マイルスのインタヴューだけを収録したコンパクト盤です(なんと懐かしい表現でしょう)。数回前にレコード・ストア・デイの限定LPレコードを紹介したら「もっとないのかー!」というご意見をいただきました。要はレコードに関する新旧の情報がほしいといっておられるわけで、それではご期待にお応えいたしましょうというわけです。69年8月4日、すなわち『ビッチェズ・ブリュー』のレコーディング直前にニューヨーク、西77丁目312番地のマイルスの自宅で行なわれたという歴史的なインタヴューが記録されています。この「69年8月4日」というところが、このインタヴュー・レコードのキモでしょう。
聞き手は当時のCBSソニー・レコードの社員、いわば素人なわけですが、マイルスは親切かつ丁寧に応えてあげています。このレコードは70年代に発売された2枚組ベスト盤のオマケとして付されましたが、それまで「マイルスは怖い」という先入観をもっていた大半の日本人は、マイルスがあまりにもフツーでやさしいことにズッコケたものです(含む、ワタクシ)。
いまにして思えば、よくぞこのような素人くさい質問に応えてくれたものです。詳細は別掲のデータをご覧いただくとして、ファッションやクルマやボクシングについて聞かれて応えるマイルスが健気でたまりません。『マイルス・イン・ザ・スカイ』や『キリマンジャロの娘』そして『イン・ア・サイレント・ウェイ』についても喋っています。自慢していないのに自慢しているように聞こえるマイルス節炸裂の瞬間です。次に話題はクラシク・ミュージックやロックに移り、最後にシメとなります。前半ではプロデューサー、テオ・マセロについても得々と語り倒されています。
以前あるジャズ雑誌がこのインタヴューを付録CDとしてつけることを検討しましたが、レコード会社に音源の使用許可がないという理由でポシャッたことがあります。一説によれば、このレコード自体、正式なルートからみれば「問題あり」らしいのです。それではまた。
【収録曲一覧】
1 His Clothes, His Cars, and Boxing
2 About Teo Macero
3 About "Miles in the Sky" and "Girls of Kilimanjaro"
4 About "In a Silent Way"
5 About Classical Music
6 About Rock Music
7 Good-Bye Miles
1969/8/4 (NY)