米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設反対を掲げる翁長雄志沖縄県知事との会談を拒み続けている安倍政権。ジャーナリストの田原総一朗氏は、きちんと話し合うべきだと指摘する。
* * *
沖縄県の翁長雄志知事が3月23日、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画をめぐって、沖縄防衛局が進めている海底ボーリング調査を含む「海底面の現状を変更する行為」を30日までにすべて停止するように指示したと発表した。移設作業に伴って防衛局が沈めたコンクリートブロックによりサンゴ礁が損傷されていないかを調べる海底調査をするためだという。
そして翁長知事は、国が停止指示に応じなかった場合について「腹は決まっている。(岩礁破砕の)許可を取り消すことになると思う」と述べた。翁長知事は普天間飛行場の辺野古への移設に反対を掲げて県知事選で当選したのだが、それから4カ月間、具体的な阻止の言動を示していないことで、移設反対派から突き上げられていたのだという情報もある。
翁長知事の表明に対して、政府は工事を進める姿勢を変えていない。「許可が取り消されれば、法的に争う」と、あくまで工事を進める考え方である。
政府はコンクリートブロックを沈める作業については、県に事前に確認して了解を取り付けている、と主張する。実は、政府は沖縄県が強く要請している那覇空港第2滑走路建設工事でも辺野古と同様のコンクリートブロックを海底に沈める作業を行っているのだが、県知事はこちらのほうは「停止せよ」と言っていない。政府からすると、知事側は「一方的で遺憾」(菅義偉官房長官の会見での発言)ということになるのだ。
政府によれば、行政には継続性と公共性が求められる。県と十分に調査したうえで作業を実施しているのであって、翁長知事のやり方は「違法性が重大、かつ明白で無効なもの」(同)ということになるのだろう。
政府は、常々「沖縄の方々の理解を得る努力を続けている」とは言っているが、たとえば3月中旬に翁長知事が上京したときにも、安倍晋三首相はもちろん菅官房長官など政府首脳は会おうとしなかった。国民には、政府が沖縄の訴えに耳を閉ざして移設作業を進めているように見えるだろう。
沖縄に米軍基地の74%を依存している現状は、どう考えても異常である。民主党政権のとき、鳩山由紀夫首相(当時)は、普天間飛行場をグアムなどの米軍基地に移設することを求めた。実現の裏付けらしきものがないという意味では絵空事であったが、発想としては理解できる。そしてその後、米国との交渉がうまくいかなくなって、「最低でも県外」となった。根拠のない無責任な発言ではあったが、これも発想としては理解できる。
それより前の自民党時代に、一度は沖縄県知事と名護市長も辺野古移設を了承しているのだが、そのときは野中広務元官房長官や橋本龍太郎内閣の首相補佐官を務めた岡本行夫氏などが現地をめぐって沖縄県民たちと時間をかけて徹底的に話し合い、信頼を得たのであった。今や、それに倍する努力が必要なのであって、政府の言うように「粛々と」作業を進めても出口はないだろう。
※週刊朝日 2015年4月10日号