Rubaiyat Of Dorothy Ashby
Rubaiyat Of Dorothy Ashby
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Afro-Harping (Dig)
Afro-Harping (Dig)

 シカゴの名門レーベルCADETに残された彼女の最高傑作『Rubaiyat Of Dorothy Ashby』でさえジャズの俎上に上がる事はあまり記憶にない。音の悪い再発盤は床置きのエサ箱コーナーの常連になっているほどだ。ジャズファンから眺めた場合この女性ハーピストの存在はどのような写っているのでしょうね。スピリチュアルというには簡素で短尺な楽曲群だし、”クール”や”セッション”といった語彙にも無縁。おおよそのジャズ的なイディオムが当たらないからだ。このアルバムでも編成は(d)(b)のリズム隊に加えハープ、ヴィヴラフォン、フルートにアルトサックス、カリンバ。曲によっては自身のポエトリーもダビングしてあり、それだけを考察するとジャズという範疇からは逸脱しているような印象を受ける。一般的にはむしろエスノな味付けを加えたポピュラーミュージック、ないしはイージー、良く言ってジャズファンクの範疇になるのかも。しかしここで聴ける音源は間違いなくジャズなのだ。ジャズの持つひりひりするようなスリリングさや綿密に計算されたコード構成、間の取り方、表現力豊かな演奏のどれをとっても第一級に近いジャズのそれとしか聴こえない。まるでM.ルグランのような収録曲《Wine》は僕のプレイリストの常連だ。

 ニナ・シモンのバックでオルガンなどを担当していたウエルディン・アーヴィンは後年独自のソウル感覚でジャズ・ファンクを創造し、それはさらに15年後に「レアグルーヴ」として脚光を浴びた。そのジャズ・ファンクの今はヒップホップのサンプリング・ネタとしてさらにはDJ MIXの常連となり「mellow groove」として体を残している。しかし『Weldon&The Kats』という編集盤に収録されたコルトレーン《Mr.PC》をはじめ多数の曲がスイングしていたり演奏力の極めて高いインプロヴィゼーションを聴くことができたりという、つまりはジャズマナーに沿ったアレンジの曲は沢山ある。「ジャズ・ファンク」「レア・グルーヴ」という再評価で再浮上した為「こっち側」サイドの音楽と思われていてジャズメンとしての正確な評価がなされていないように思うのです。

 ドロシー・アシュビーにも同じようなことが言えると思う。ウエルディ/アシュビー共に高い精神性と卓越した理論を持ち、その理論は例えばビル・エバンスにも匹敵していると私自身は考える。マイノリティならではのラジカルな姿勢はマックス・ローチにも通じる部分はあるし、ジャズ界での過小評価背景の経緯はメディアを含め今後時代を遡って調べていこうと思います。カデットでは「Afro Happning」というこちらも傑作アルバムもある。ちなみに海外のレコード屋では軒並み高価。中古レコード屋での価格はそのレコードに対する評価だと思っている。

 いまエスペランザ・スポルディングというマルチプレイヤーが注目されていますがこのドロシー・アシュビーやパトリス・ラシアンなどの70年代黒人女性プレイヤーの系譜が引き継がれているような気がしてます。

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