無料でマンガが読めるアプリとして人気の「マンガボックス」。元・株式会社ライブドア代表取締役CEOで実業家の堀江貴文氏は、このアプリから紙媒体の将来的位置づけや編集者の役割について考えた。
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先日、マンガボックスの中の人たちとトークライブをやってきた。マンガボックスは、すでに300万ダウンロードを達成しているスマートフォン用のアプリケーションで、マンガを無料で読むことができる。
ここ数年間で、マンガに出会える機会はどんどん減っている。実際、10年くらい前までは週刊少年ジャンプや週刊少年マガジンのような人気マンガ誌の発売日には、電車に乗ると何人かはマンガ誌を読んでる人たちがいた。だが今はどうだろう。みんなスマートフォンをいじっている。
そういう人たちの多くは、無料でアプリがサクサク動けば、ダウンロードしてスマホでマンガを読むのだ。紙の雑誌が、すでにマンガを読むためのエントリー手段の主流として機能しなくなっていることは明らかだろう。
マンガボックスは、とにかくたくさんダウンロードさせてマネタイズは後から考えるというモデルだ。DeNAという資金力のある会社がどんどんテレビCMを打っている。こうしたアプリに、出版社は独自のアプリにこだわらずに連携すべきだっただろう。
例えばマンガボックスには、講談社と小学館が参加しているが、集英社は独自路線をとったらしく不参加で、今ごろ地団駄を踏んでいるかもしれない。それくらい圧倒的に普及しているのである。
DAU(1日にサービスを利用したユーザー数)までは教えてもらえなかったが、デイリーのアクティブ率は、かなり高いらしい。ダウンロード数が多くてアクティブ率が高いとなれば、当然、広告効果も高くなる。
さらに、今なら紙の単行本もビジネスとして成り立つだろう。また作品の版権を持てることもメリットだ。なんせ、今や映画やドラマの原作はマンガばっかり。原作を押さえれば、その後のスマホゲームでの展開も独占できるし、動画コンテンツだって押さえることができる。将来性という意味でも、単なるマンガアプリと侮ってはいけないのだ。
この動きを出版社が主導で行おうとすると、現場の紙の編集部と確実にバッティングするだろう。だから、ベンチャー企業が相当の資金を投入して、編集のスキルのある旧来の出版社とつながりがある人がじっくり現場を説得してコンテンツや編集者を確保し、サクサク動くアプリを作ってしまうというやり方が成功の方程式なのではないだろうか。
これはマンガだけではなく、活字が主体のコンテンツでも同じことが言えると思う。アプリ化のヒントはここにある。紙の雑誌はおそらくプレミアムコンテンツとなり、CDが普及した後のレコード盤みたいな位置づけになると思う。
しかしデジタルになったからといって編集者の役割はなくなるわけではなく、より重要性を増していくと思う。ただし、これまでの紙の雑誌の作り方にこだわってはいけない。あくまでもスマートフォンやタブレットで見られることを前提としたコンテンツ作りが必要だし、スパイラルで広まっていくような仕掛け作りも重要なのである。
※週刊朝日 2014年5月23日号