宝塚の歴史に名を残すトップスター、鳳蘭さん。当時は鳳さんとともに榛名由梨さん、安奈淳さん、汀夏子さんの4人がトップとして、黄金期とも言える時代を築いた。作家の林真理子さんとの対談で、鳳さんは当時のエピソードを次のように明かす。
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林:先日、映画館で何十年かぶりに「風と共に去りぬ」を見ましたけど、やっぱりクラーク・ゲーブル、カッコよかった。あの笑い方とか、女の人をちょっとからかうようなしぐさとか。
鳳:彼の映画、何度見たかわからない。男らしさの中に愛情があって、ごんた坊主(やんちゃ坊主)みたいな感じとか、もう最高の男性ね。
林:それをご自分が再現していらしたから、キャーキャー大変だったんですよね。
鳳:「人妻殺し」(笑)。私の時代、安奈淳さんは小学生から中学生のファンが多かったんです。汀夏子さんが中学から高校ぐらい。榛名さんが高校の後半から大学生。私は人妻のファンが多かったの。
林:男の人をよく知っている人妻が求める理想像だったんですね。
鳳:ほかの3人は楽屋待ちがすごかったけど、私はあんまりいないの。奥さんだから、終わるとみんな急いで家に帰っちゃう。でも、家に帰っても絶対に夫の顔を見なかったって。がっかりするから(笑)。
林:わかります、その気持ち。私は貧しいアルバイト学生だったので、鳳さんの宝塚時代には間に合わなかったんですけど、そのあとは「ラ・マンチャの男」も「レ・ミゼラブル」も見ています。どっちも鳳さんがいちばんよかったな。もう余裕で楽しんでいるという感じだった。舞台って総合芸術だから、人間性がゆったりと大きい人が、その役を楽しまないとできないですよね。スケールの大きさが必ず要求される。特にミュージカルをやる人は。
鳳:愛だと思うのよ、それは。自己中心だったらダメで、相手をすべて受け入れて包み込むの。それが舞台人の大きさ。特に宝塚の場合、娘役をきれいに見せる努力をしている男役がすてきなわけよね。
※週刊朝日 2014年4月11日号