女子モーグルで4位に終わった上村愛子 (c)朝日新聞社 @@写禁
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 ソチ冬季五輪、日本勢がいまひとつ元気がない。金メダルの有力候補だった女子ジャンプの高梨沙羅がまさかの4位、女子モーグルの上村愛子も、また4位。そんななか、街中やネット上で盛り上がっているのが、採点競技の宿命である「えこひいき判定」。疑惑に迫ってみた。

 6人で競う決勝の3回目。1番滑走で登場した上村選手は、エア、ターンともにミスなく、6人中最速のタイムで滑り降りてきた。自ら「メダル取れたかな」と思ったというほどの会心の滑りを披露した。

 だが、3位は最終滑走のバンクーバー五輪金メダリストでW杯3年連続総合優勝中のハナ・カーニー選手(米国)。ターンで2度の大きなミスがあったにもかかわらず、である。

 現地で取材していたスポーツライターの折山淑美さんも、「一瞬、上村選手が勝ったと思った」と振り返る。だが、「判定に納得している」とも話す。

 両選手の判定を解説すると、こうだ。上村選手は、スピードに乗って、スキー板をコブに向かって縦にぶつけるような「カービングターン」で攻撃的に滑るため、上体が不安定になりやすい。一方のカーニー選手は、スキー板を雪面に接したままの状態でターンをすることが多く、上体がブレずに安定感を感じさせる滑り方だ。

 最近のジャッジの「流行」は「カービングターンよりも安定感のある滑り。上体がブレると基礎点が伸びにくくなった」(折山さん)。「流行」を読むことも、採点競技を制する大きな要素なのだという。

 さらに、カーニー選手のように、「五輪に入るまでにどんな成績を残しているか。実績の積み重ねも非常に重要だ」と語るのは、スポーツジャーナリストの生島淳さんだ。

「冬の競技は、ジャンプ競技さえも遠くまで飛べばいいというものではなくて、テレマーク、飛型、着地姿勢など最終的には審判の判断となる」(生島さん)。その審判の心証に実績は少なからず影響を与えるのだろう。

週刊朝日  2014年2月28日号

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