俳優・山田孝之さんが初の舞台に挑む。それもミュージカルだという。

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 天の邪鬼な性格だという。人から期待されるイメージがあると、つい裏切りたいと思ってしまう。あるとき飲みの席で、舞台でも活躍している俳優仲間たちと、「孝之が舞台をやるなら……」という話で盛り上がったことがある。でも、そのとき話に出た役柄や劇場の、友人たちの勝手なイメージを耳にしながら密かに、「みんなの思うようにはなるもんか!」と心に誓った。

 15歳で鹿児島から上京し、俳優として15年のキャリアを積んだ彼が、初めての舞台に挑戦する。かつては鉄鋼業で栄えたニューヨークの田舎町を舞台に、それぞれに問題を抱えた6人の男たちが、一獲千金を狙ってストリップショーに立つ決意をするミュージカル「フル・モンティ(“すっぽんぽん”の意)」で山田さんが演じるのは、バツイチの冴えない男ジェリーだ。舞台の詳細が発表されたとき、俳優仲間たちはどんな反応を示したのだろうか。

「反応なんて、まったくなかったです。みんなが観たかったのは、こういうのじゃなく、きっと小規模の劇場の、小難しい翻訳劇とかだったんでしょう。それで、稽古で苦しみもがいてる姿(苦笑)。まぁ、なんだかんだでみんな観に来るんでしょうけど、『チケット買えるか?』ってわざわざ連絡をくれたのはウチの親父ぐらいです(笑)」

 山田さんがいい意味で裏切りたいと願うのは、俳優仲間からの期待だけではない。たとえば観客にも、演出家にも、常にサプライズやショックを与えたいという気持ちがある。

「僕らのやってる仕事って、お芝居という嘘をつくことで、人を感動させたり騙したりしているわけで、実は子供のいたずらと大して変わらないと思うんです。僕の場合、そういう“いたずら心”みたいなものは、誰に対しても持っているのかもしれないですね」

週刊朝日 2014年1月3・10日号