医薬品のネット販売が転機を迎えた。安倍内閣は11月12日、「薬の憲法」である薬事法の改正案を閣議決定した。成立すれば、来年4月から、医師の処方箋がなくても買える市販薬の99.8%がネットでも買えるようになる見通しだ。しかし副作用の問題は避けて通れない。
そもそも薬には、必ず副作用がある。副作用がない薬なんて、この世には存在しない。ぜひとも、この点は頭に入れておきたい。『警告―身近な薬の副作用』(小学館)を監修した岩手医科大学薬学部非常勤講師の武政文彦氏が解説する。
「かぜ薬や鼻炎薬など抗ヒスタミン成分が配合された薬は、眠気が強く出ます。薬を飲んで自動車を運転してしまい、交通事故を起こす例が少なくありません」
胃腸薬(抗コリン成分が配合された薬)は、のどが渇き、唾液が減ってしまうことがある。特にお年寄りは、唾液が減ることで食べ物ののみ込みが悪くなる「嚥下(えんげ)障害」を起こしてしまう。
さらに深刻な症状になることもある。市販薬で入院治療が必要な重い症状が出た場合には救済制度がある。「医薬品副作用被害救済制度」である。病院の窓口で支払う自己負担分の給付などが受けられる。この制度に基づいて医療費などを給付された件数(処方薬の副作用を含む)は増加傾向にある。
市販薬に重い副作用が出るのは、まれなケースではある。とはいえ身近な総合感冒剤(かぜ薬)でも、スティーブンス・ジョンソン症候群と呼ばれるアレルギー反応で皮膚がただれることもある。かぜ薬や混合ビタミン剤では劇症肝炎などが起き、死亡したこともあるのだ。
※週刊朝日 2013年11月29日号