野田政権が皇室典範の見直しに向けた「論点整理」を発表した。女性皇族結婚後も皇籍にとどまる「女性宮家」創設案と、皇籍を離れて国家公務員として皇室活動を続けるという2案を提示する内容だ。ジャーナリストの田原総一朗氏は、「論点整理」しかできない現状を打破すべきだと主張している。

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 私は、女系天皇を認めるべきだと主張しているわけではない。天皇の存在は、世界に誇るべき日本の伝統だと考えている。権力と権威が一元化していないことが、日本が安定しているゆえんだと捉えている。

 かつて、源頼朝、足利尊氏、豊臣秀吉、徳川家康など天下を取った権力者たちがいたが、誰も天皇を亡きものにしようとは考えなかった。

 何より、京都の御所には高い石垣も堀もない。よくこれで皇室が現代まで続いたものだと改めて感心するが、日本人にとって天皇とはそういう不可侵の存在なのだ。

 だからこそ、日本は政権がコロコロ変わっても、どうにか安定していられるのである。

 その天皇制を将来も持続させていくことを第一に考えるべきだ。その点では、保守右派の人々と私は、ほとんど差がないと思う。

 いまこそ、国民が皇室問題について、大いに論議するべき時だ。

週刊朝日 2012年10月26日号

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