外の様子が気になる、被害が心配である、という心情を責めることはできない。ひとつの代替案はウェブカメラを活用することだ。多くの河川敷にはカメラが設置され、河川の状況をライブで公開している。田んぼや農地などの私的な土地であっても現在では安価に取り付け、自宅で監視することができる。事実、木村教授が行った聞き取りでも、こうしたライブ映像を見ることで外出をあきらめることができた、という声が聞かれたという。
災害から命を守るためには、災害の「わがこと(我が事)」化が肝要といわれる。報じられる被害が自分にいつ降りかかってもおかしくないという認識をもつことだ。そのためには大手メディアだけでなく、SNSや気象庁のサイト、都道府県などが提供するアプリ等、さまざまなソースから情報を取得する習慣を、住民一人ひとりがもつことだという。
大手メディアが提供する情報は最大公約数的なものになりがちで、どうしても自分の住む地域単位で実際に何が起こっているのか、それが自分たちのどのような被害や影響をもたらすのかという「わがこと意識」が生じづらい。多角的に情報を集めることが正確な現状把握につながり、そこからわがこと意識が育まれる。そうすれば台風の際、「様子を見に行きたい」と思っても、リスクを正しく見つめなおす余地が生まれるはずだ。(小神野真弘)
○木村玲欧(きむら・れお)/兵庫県立大学環境人間学部・大学院環境人間学研究科教授。防災心理学を専門とし、災害時の人間心理・行動、防災教育・地域防災力向上手法などを研究。『災害・防災の心理学-教訓を未来につなぐ防災教育の最前線』(北樹出版)など著書多数。