世界には「影がなくなる日」があることをご存じだろうか。ピーター・パンの話ではない。本当に1年に2度影がなくなる場所があるのだ。
理由は簡単である。太陽が真上にくるからだ。もちろんこれは電信柱や標識のような、デコボコがなくまっすぐ建っているものの影だけがなくなるのであり、上部に葉の生い茂る木々やあちこちにでっぱりのある人間はでっぱり部分の影が足元に残る。
ハワイではこれを「ラハイナ・ヌーン」と呼んでいる。ハワイ語で「La」は「太陽」、「Haina」は「残酷な」を意味し、「真昼の残酷な太陽」とでも訳せばよいだろうか。実際、ハワイ州のマウイ島には「ラハイナ」という島一番の賑わいをみせる街があるが、ハワイ州の中でも特に気温の高い土地でもある。
日本ではこの現象を見ることは不可能だ。かろうじて沖ノ鳥島付近ならば体験することは可能だが、機会を得ることは難しいだろう。
●影が消えて南側に影ができる
1年をかけて太陽は地球の赤道を中心に、北回帰線(北緯23度26分)と南回帰線(南緯23度26分)の間を行き来している。分かりにくいと思うので図を用意したが、地球の地軸の傾きと公転の関係でこの回帰線の間に位置する土地では1年に2回、太陽が真上にきて影が消える現象が起こる。
この「影なし現象」は、シンガポールや台湾旅行ネタ話として、日本人の間で昔からよく言われてきた。
加えて、北側にできていた影が消えた日以降、2度目の「影なし現象」日までの間は南側に影ができる、という信じられない現象に驚く日本人を見て不思議がる光景もあったようだ。
●2019年の「ラハイナ・ヌーン」
実は、タイやフィリピン、オーストラリア、ブラジルなどの国々には「影なし現象」が出現する観光地が多数ある。メキシコ・タマウリパス州の北回帰線直下の道路には、毎年微妙にずれていく太陽直下地点の標識が立てられているほどであるにもかかわらず、日常で意識されることはない。