──イチロー選手は、これからどんなギフトをくださるんでしょうか。
ないですよ。そんな無茶言わないでくださいよ。でも、これは本当に大きなギフトで、去年、3月の頭にマリナーズからオファーをいただいて、それから今日までの流れがあるんですけれども、あそこで終わってても全然おかしくないですからね。去年の春までで終わっていてもまったくおかしくない状況ですから。今、この状況が信じられないですよ。
あの時考えていたのは、自分がオフの間、アメリカでプレーするまでに準備をする場所というのは神戸の球場なんですけど、寒い時期に練習するので、へこむんですよね。やっぱ心が折れるんですよ。そんな時もいつも仲間に支えられてやってきたんですけど、最後は今まで自分なりに訓練を重ねてきた神戸の球場で、ひっそりと終わるのかなあと、あの当時想像していたので、夢みたいですよ。こんなの。これも大きなギフトです。質問に答えていないですけど、僕からのギフトはないです。
──涙がなく笑顔が多かったというのは、この開幕シリーズが楽しかったということでしょうか。
純粋に楽しいということではないんですよね。やっぱり、誰かの思いを背負うというのは、それなりに重いことなので。そうやって一打席一打席立つことって簡単ではないですね。だから、すごく疲れました。
やっぱり一本ヒットを打ちたかったし、応えたいって当然ですよね、それは。僕には感情がないって思っている人いるみたいですけど、あるんですよ。意外とあるんですよ。結果を残して最後を迎えたら一番いいなと思っていたんですけど、それでもあんな風に球場に残ってくれて。まあ、そうしないですけど、死んでもいいという気持ちはこういうことなんだろうなと。死なないですけど。そういう表現をする時ってこういう時なのかなと思います。
──最低50歳まで現役とおっしゃっていましたが、日本のプロ野球に戻るという選択肢はなかったのでしょうか。
なかったですね。