ソーラーシェアリング型発電所(市民エネルギーちば提供)
ソーラーシェアリング型発電所(市民エネルギーちば提供)
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パネルの下でトラクター・コンバインによる農作業もできる。(市民エネルギーちば提供)
パネルの下でトラクター・コンバインによる農作業もできる。(市民エネルギーちば提供)
市民エネルギーちば代表 椿茂雄氏
市民エネルギーちば代表 椿茂雄氏
市民エネルギーちば代表 東光弘氏
市民エネルギーちば代表 東光弘氏

 太陽光発電パネルの下で作物を作り、農地を“ダブルインカム”にする発電所が増え始めている。従来の太陽光発電所は農地には造れなかったが、「ソーラーシェアリング」と呼ばれる新発電所は農業も継続するため、農地を発電所として兼用でき、ダブルインカムで農家の経営安定に貢献する。耕作放棄地の再生にも活用されるソーラーシェアリングは、衰退著しい日本の農村再生の切り札となりそうだ。千葉県匝瑳(そうさ)市を中心にソーラーシェアリング型発電所を次々と造っている、市民エネルギーちば合同会社を訪ねた。

【写真】発電パネルの下でトラクターが作業する様子がこちら

 この話を聞いた筆者は最初、「太陽光発電パネルを敷き詰めたら、その下の地面に日は当たらない。発電と農業の共用なんて本当にできるの?」と疑問に感じた。だがソーラーシェアリング型発電所を実際目にして初めて、疑問は解消した。

 皆さんもよく目にする、従来型の太陽光発電所のパネルは、人の背丈ほどの架台の上に、ほぼ隙間なく土地いっぱいに設置される。だがソーラーシェアリング型発電所は、見た目からかなり違っている。市民エネルギーちばの100%子会社が経営する、匝瑳メガソーラーシェアリング第一発電所(メガソーラー発電所)がそうだ。2017年に発電を始めた同発電所は、広さ3万2000平方メートル。1メガワットの発電能力があり、年間の売電収入は約5000万円に達する。

 この発電所は、まず架台の様子が違う。高さ約3メートルで、大きな藤棚のようだ。支柱の間隔は十分広く、人は背をかがめずに下で農作業ができるし、トラクター・コンバインも往来できる。“藤棚”の上には発電パネルが並ぶが、これも形状が従来とは異なる。約30センチ×2メートルの短冊状のパネルが、パネル1に対して空間2の間隔で並ぶ。これだけ隙間があるとパネルの影は時間を追って移動し、ずっと日陰になる作物はできない寸法だ。

 だが疑い深い読者は、「それって日当たりが悪いってことでしょ? 生育は悪くならないの?」と感じることだろう。筆者もそう思った。「それがそうはならないんです」と、市民エネルギーちば代表の東光弘氏は説明する。農作物が育つには一定量の光が必要だが、ある量を超えてさえいれば、ほとんどの作物で生育への影響は変わらない。通常の畑は大抵「光が多過ぎ」な状態のため、遮光率が30数パーセントになっても、生育も収量も変わらないというのだ。「むしろ夏場など日差しの当たり過ぎが抑制されるせいか、質が良く収量も多くなることさえあります」(東氏)

 現在メガソーラー発電所では大豆・麦を有機栽培しているが、それはこの土地が長年耕作放棄地で土地がやせているためだという。「5年6年と手入れを続けていけば、もっと高く売れる野菜なども栽培可能になるはずです」と東氏は話す。米でも野菜でも、ソーラーシェアリング型発電所の下で栽培可能というから、汎用性は高い。

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農作物以外の収入源ができることは、農家の経営安定に貢献する