ただ、根尾に関しては高校入学前からスーパー中学生として評判になり、大阪桐蔭でも常に注目される立場だったことを考えると他のルーキーに比べて、この点は安心感がある。また、ポジションは異なるもののチームの大先輩には甲子園の大スターで、高校卒1年目から大活躍した松坂大輔がいることも大きい。その松坂に助言を求めるのも一つの方法だ。とにかく周囲に振り回されることなく、自分のペースを崩さないことが成功へのカギになるだろう。
そして最も大きな壁となるのがやはりプレーの面である。高校卒の選手がまず苦労するのが木製バットへの対応である。金属バットの場合は反発力が高いためミートさえすればボールは飛んでいくが、木製になると強くバットを押し込む力とより正確なミート力が求められることになる。さらにアマチュアとプロでは投手の投げるボールのレベルも一気に高くなる。根尾も昨年9月に行われたU18のアジア選手権では木製バットで4割近い打率を残し、ホームランも放っているが、最初はプロのレベルに対応するまでに時間がかかると見るのが妥当なところだろう。その時に重要なのが早く自分のスタイルを確立するということだ。根尾のバッティングの持ち味はその高い運動能力を生かしたフルスイングである。プロのスピードボール、鋭い変化球に対応しようとしてその持ち味が失われてしまうと、悪循環に陥ってしまうことになるだろう。
次に気になるのはショートの守備だ。高校では投手を兼任し、下級生の頃は外野手だったこともあり、その守備についてはまだ課題が多いという意見が多い。実際、昨年のU18アジア選手権では小園海斗(報徳学園→広島)がショートを務めていた。具体的には細かいステップを使ったフットワークと、送球の安定感が課題となる。そして、同じチームにはリーグでも屈指の守備力と脚力を誇る京田陽太が控えており、そのレベルに達することは容易ではないだろう。
長いプロ野球の歴史を振り返っても高校卒1年目の野手で新人王を獲得したのは中西太(1952年・西鉄)、豊田泰光(1953年・西鉄)、榎本喜八(1955年・毎日)、張本勲(1959年・東映)、清原和博(1986年・西武)、立浪和義(1988年・中日)のわずか6人である。この数字を見ても高校卒の野手が1年目から活躍するのがいかに難しいかがよく分かる。