妖怪ベンチには、随所に工夫が凝らされている。「猫また」の作者で、第2回全国妖怪造形コンテスト・一般部門で最優秀作品賞を受賞した大分県日出町の首藤さんは言う。「実は、猫またの着物の模様は、福崎町の町章なんです。町の木や花も入っています」。
制作では、可愛らしさの中に潜む怖さを出すのに苦労した。「猫または人間を誘って食べちゃう妖怪ですからね。可愛いけれど怖い、という感じが出るように表情を工夫しました」。
実は首藤さん、造形は模型メーカー、タミヤが毎年開催する「人形改造コンテスト」で金賞を受賞するほどの腕前だ。「インスタにアップされ、お店の人たちに可愛がってもらえていてうれしい。造形は自己満足的なものですが、今後も人が喜んでくれるような作品を制作したいと思いました」
また、一反もめんが手にしているお茶は、隣に座った人に差し出すためだそうだが、原型を制作した山形市のホカリタケシさん(48)によると、ブラックな裏設定もあるらしい。「口の顔出し看板に顔を入れた人間をお茶で流し込もうという発想です。のどに詰まらせたくないし、という……」
「簡単そう」と思って一反もめんを選んだが、町側から「水木しげるさんのはやめてね」とお達しが。最初はどう作っても似てしまい後悔したという。苦心して、従来のイメージから脱皮した作品を完成させた。「なかなか現地に行けないので、インスタにアップされた写真を見て楽しんでいます」
町は今後、新たに5基の妖怪ベンチを設置する。設置を求める店舗も増え、現在、約50店が待ち状態だ。小川さんは「福崎町に来られる方々の反応を見て、笑えることや、一緒に写真を撮られることが大事かなと考えています。今後も小さな町のそこら中に妖怪を置いていって、レンタサイクルなどでぐるぐる回れるようにしたいです」
他の妖怪ベンチに施されたこだわりも、ぜひ現地で見つけてほしい(ライター・南文枝)