ここまでさまざまなケースを紹介したが、吉田の場合は過去の事例から見ても高校からプロ入りした方が活躍する可能性は高いように感じる。一つ目の理由は既に「高校ナンバーワン」という高い評価を受けている点だ。夏の甲子園の活躍は確かに鮮烈だったが、それがなかったとしても吉田は1位指名される可能性は高かっただろう。それくらい現時点の能力も将来性も高い投手なのだ。

 もう一つは身体的な強さを身につけている点だ。身長は決して高くないものの、しっかり鍛えられた体格は高校生では間違いなく上位である。そして、プロ入りを推す最大の理由がその完成度の高さである。国体で152キロをマークしたストレートは確かに素晴らしいボールだが、吉田の良さはそれだけではない。コントロール、変化球、打者との駆け引き、フィールディングなど投手として必要なプレーを全て高いレベルで備えているのだ。高いレベルでプレーすることで、さらに潜在能力が引き出されることになるだろう。逆に大学では完成度の高さからいきなり絶対的なエースになる可能性が高く、そのことが無理な起用や故障に繋がるリスクもあるのだ。

 簡単にまとめると、吉田ほどの実力の持ち主で将来プロでやりたいという気持ちが強いのであれば、一日でも早くプロ入りした方が本人のためになることが多いということである。

 吉田のプロ志望表明でドラフト戦線もいよいよ盛り上がりを見せてきた。この逸材に果たして何球団が1位指名するのか、そして、どの球団が当たりくじを引き当てるのか。当日も話題の中心は吉田になるだろう。

●プロフィール
西尾典文
1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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