ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中
ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中
(c)朝日新聞社
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 経済専門家のぐっちーさんが「AERA」で連載する「ここだけの話」をお届けします。モルガン・スタンレーなどを経て、現在は投資会社でM&Aなどを手がけるぐっちーさんが、日々の経済ニュースを鋭く分析します。

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 先週の続きです。単純な仕事が、ほぼAI(人工知能)でこなせるようになると、多くの人が失業し、AIを使って事業ができる才能を持つ一部の人だけが生き残る……という事はすでに私の周りでは多く起こっています。これは一個人としてみると「革命」である可能性があるのです。

 これまでは、私の会社のような中小企業ですと何をするにも少人数で、徹夜で作業をして、情熱だけで開発をしてきたわけです。ちょっとでも世に出ると、大手企業が何百人も投入してあっという間に追いついてくる。しかし、AIさえあればそういう「何百人」を我々が手にしたも同然で、大企業に十分対抗できる可能性が出てきます。つまり生産における大企業の優位性が崩れる可能性が高い。

 AIを開発できる人や使える人と、そうではない人の所得格差は確実に広がります。これはもう止められません。アメリカで言う1%vs.99%の世界が来ることになります。

 しかし、この1%の人を実際にアメリカで見ていると、お金はありますが、趣味、嗜好は実に多様で、画一的な工業製品を嫌い、自分の好みを押し通す傾向にあることは一目瞭然です。つまり彼らはスーパーでパンを買わず、自分の好みのパン屋でしかパンを買わないなど、ありとあらゆるもので「ハンドメイド」を好むのです。実際ロールスロイスやフェラーリなどの高級車も製造現場を見てみればそのほとんどはハンドメイドだったわけです。そういうことを考えれば、設備投資が過大で、社員も膨大な大企業にとっては需要サイドからもピンチが訪れることになります。大企業の経営は画一的大量生産に支えられてきたわけですから存在価値が問われます。

 こう見てくるとこれはあまり悪い話ではありませんね。AIのお陰でコストをかけずに事業を始められるし、大量生産の必がない。需要の見込めるニッチな商品を開発して生産することができれば、十分なビジネスが存立する可能性があるのです。

 私がいつも「地方の時代だ」と言っていることがここにつながってくる。地方は土地や起業の初期投資が安く、これまで人がいないと文句を言ってきましたがもう人はいらない(笑)。大量生産の必要がありませんからね。これぞ本当の「働き方改革」につながる話ではないでしょうか。

AERA 2018年3月5日号

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