暴力を巡るいびつな関係がみられるのは、相撲界だけではない。朝日新聞の記事によると、ある小中学生のアメリカンフットボールチームで、暴力行為を告発された指導者が辞意を表明した。その後、保護者のほぼ全員から復帰を求める嘆願書が提出され、コーチとして復帰した。ところが、保護者の中には、復帰してほしくないのに、嘆願書を出さないと告発者だと思われるから、仕方なく提出した人もいるようだ。選手たちを殴ることで知られたプロ野球の元監督が亡くなったときは、「愛情ある指導」を絶賛する報道が目についた。
暴力を育む芽は、社会のあちこちに残っている。今回の事件を、そんな芽を摘むきっかけにしたい。(解説/相撲ライター・十枝慶二)
【キーワード:力士暴行死事件】
2007年6月、入門からまもない17歳の力士が稽古後に急死した事件。所属する部屋の親方が兄弟子数人とともに額にビール瓶を打ちつけ、顔などを殴ったうえ、稽古場の柱に縛りつけて殴打。翌日も、土俵にたたきつけ、金属バットなどで殴るなどして死亡させたとされる。
※月刊ジュニアエラ 2018年3月号より
ジュニアエラ 2018年 03 月号 [雑誌]
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