7月の参議院議員選挙(参院選)では、選挙権年齢が現在の「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げられる。どうしてだろうか? 引き下げられたことで、日本はどう変わるのだろうか?

1923年、普通選挙を求めて皇居前をデモする人々 (c)朝日新聞社
1923年、普通選挙を求めて皇居前をデモする人々 (c)朝日新聞社
政治には若者の力が必要!福岡政行先生1945年、東京都生まれ。政治学専攻。書物での研究より、現場の観察、調査が大切というのがモットー。『よくわかる選挙と政治 しくみとルールを知っておこう』(PHP研究所)を監修(撮影/写真部・長谷川唯)
政治には若者の力が必要!
福岡政行先生

1945年、東京都生まれ。政治学専攻。書物での研究より、現場の観察、調査が大切というのがモットー。『よくわかる選挙と政治 しくみとルールを知っておこう』(PHP研究所)を監修(撮影/写真部・長谷川唯)

 毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』7月号で、18歳選挙権を特集。特別にその一部を紹介しよう。ナビゲーターは、東北福祉大学特任教授の福岡政行先生だ。

■約200年前まで政治は一部の人のものだった

 政治は、国民一人ひとりが主役の民主主義の下、原則、選挙で選ばれた議員たちによって行われる。今では当たり前に思われるけど、200年ぐらい前までは、政治は王様や貴族など、ほんのひと握りの特別な人たちだけのものだったんだ。

 同時期の日本でも、江戸時代に政治の中心だった江戸幕府では武士だけが政治にかかわり、自分たちに都合のいいようにする人たちもいた。江戸幕府を倒して生まれた明治政府も、最初は一部の人たちで政治が行われた。これに不満をもつ人たちが、選挙で議員を選び、国会を開いて政治を行うべきだと主張する「自由民権運動」を繰り広げた。1890年には初めての選挙が行われ、国会(帝国議会)が開かれた。

 しかし選挙権があったのは、最初は、一定の高額な税金を納める25歳以上の男子だけだった。そこで、納税額にかかわらず選挙権が得られる制度「普通選挙」を求める運動が起こり、1925年に25歳以上のすべての男子に選挙権が認められた。しかし、女性の選挙権はまだなかったので、「女性参政権運動」が続き、45年、ついに20歳以上のすべての男女に選挙権が認められた。このように、選挙権は明治時代以降、多くの人々が闘って勝ち取った大切な権利なんだよ。

■政治について考える力をつけることも大切

 選挙権は、明治時代以降、人々が闘い、勝ち取ってきた権利。でも、今回「18歳以上」に引き下げられたのは、若者たちが闘ったからではない。では、どうして引き下げられたのだろう?

 選挙権年齢を18歳以上に引き下げる理由は、若者の声を政治に反映させるためだといわれている。現在の政策は、高齢者重視になりがちだ。65歳以上の高齢者は現在、総人口の約27%で、2050年には約40%に増えるといわれているから、この傾向はさらに強まるだろう。18、19歳の有権者を増やして、そうした流れを変えようというねらいはよくわかる。

 でも、18歳以上に引き下げるだけでは問題は解決しない。結婚して家庭をもつ前の若者は、昔から投票率が低い。ましてや、高校生や大学生は、親や先生から「学校の勉強をしていればいい」と言われ、それ以外の時間は部活や遊びに使って、政治に関心をもたない人が多い。18歳になっていきなり、「選挙に行きましょう」と言われても、何をもとに判断して投票したらいいかわからないだろう。大切なのは、自分の頭で政治について考えられる若者を増やすことだ。

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AERA dot.編集部
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