「日大付属は高校受験での志願者が多く、以前はそれほど中学受験の広報に力を入れていませんでした。それがここ数年は中学受験を全面的にアピールしています。先を見据えた教育改革も行っており、受験生や保護者から支持されています。最近の受験生の志望動向を見ると、多くの日大付属が併願校として選択されています」
日大付属の人気を牽引した日大豊山は、全国に26校ある日大の付属校の中で唯一の男子校だ。同校広報主任の田中正勝先生は、日大豊山の人気の背景として、男子校の魅力を挙げる。
「本校の卒業生は、一級建築士や獣医師、弁護士や公務員などさまざまな分野に進んでいます。またクラブ活動では水泳部が強豪で、オリンピック選手も出ています。男子は縦のつながりが強く、活躍している先輩の姿を自分の将来と重ね合わせている。そういう多彩な人材の輩出が、本校の強みのひとつになっています」
■抜群の立地と環境の良さ
日大豊山は第1志望として受験する生徒が多く、合格者数に対する入学者数の割合で示す、いわゆる「歩留まり率」は73.8%(2021年度入試)と高い。併願先はほかの付属校ではなく、成城(東京都新宿区)や高輪(東京都港区)など男子校が多いという。
日大豊山は東京メトロ有楽町線・護国寺駅から徒歩15秒と抜群の立地だ。隣には真言宗の名刹・護国寺の緑が広がり環境もいい。2015年に完成した新校舎は11階建てで、エスカレーターを設けるなど設備も整っている。ここ数年は、都内の私立男子中学が集まって学校説明などを行う「東京私立男子中学校フェスタ」の会場になっており、受験生や保護者が恵まれた環境を目にする機会も多い。
日本大学板橋病院をめぐる背任に端を発した日大の一連の事件は、田中英寿前日大理事長の逮捕という最悪の結果を迎えた。日大豊山の田中先生は「我々にとっては非常に迷惑な話ですが、静観するしかありません。ただ、学校自体はまったく揺らいでいません。学業にも支障をきたしておらず、生徒はいつも通り過ごしています。高3生も事件に影響されることなく、しっかりと進路を決めています」と話す。
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